手拍子のリズムパターン、クイーンやスライの名曲から鳥居真道が徹底考察

パターン2「連打」



ふたつめのパターンは連打です。4分音符や8分音符で刻まれるパターンです。このパターンを代表する曲はスプリームスの「Where Did Our Love Go」です。「Come See About Me」と「Baby Love」にも似たようなパターンが登場しますが、手拍子かどうか判断がつきません。木の枝を束ねたものでコンクリートの床を叩いている音のようにも聴こえます。他にもスプリームスをオマージュしたと思われるソランジュの「I Decided, Part 1」でも手拍子の連打パターンが使われています。ソランジュの姉であるビヨンセの「Single Ladies (Put a Ring on It)」も手拍の連打パターンが印象的です。





その他の例ではビートルズの「Hold Me Tight」やスライ&ザ・ファミリー・ストーンの「I Want to Take You Higher」、アーチー・ベル&ザ・ドレルズの「Tighten Up, Pt. 1」のコーラス部分でも聴くことができます。ビーチ・ボーイズの「I Get Around」では、レイヤーのひとつとしてここぞという箇所で効果的に使用されています。

パターン3「定番」



パターン1を「もっとも標準的」といっておいて「定番」とはどういうことだと思われるかもしれませんが、定番なのだから仕方がありません。こちらのパターンは「ウン・タタ・ウン・タン」というものです。具体的な曲でいえば、シュレルズの「I Met Him on a Sunday」やクッキーズの「Chains」などです。厳密には、前者の4拍目はフィンガースナップです。ビートルズの「I Saw Her Standing There」でも使われています。また「I Want To Hold Your Hand」での手拍子はこの定番パターンの変化型とみなすことができるでしょう。

トム・ハンクスが監督した『すべてをあなたに』の劇中歌である「That Thing You Do!」でも同様のパターンが使われています。こちらはブリティッシュ・インヴェイジョンの影響をモロに受けたアメリカのバンドによるマージービート風の曲という設定で書かれた曲です。作者は昨年亡くなってしまったファウンテンズ・オブ・ウェインのアダム・シュレシンジャーです。この定番パターンはマージービート風という記号性をまとっているといえます。



その他の例でいうと、ローリング・ストーンズの「Start Me Up」やブルーノ・マーズの「Marry You」のコーラス部分でも確認できます。カーズの「My Best Friend’s Girl」に登場するパターンはこの定番パターンの変化型に分類できます。また、『レザボア・ドッグス』でマイケル・マドセン演じるミスター・ブロンドが小躍りしながら警官の耳を削ぐシーンで流れるスティーラーズ・ウィールの「Stuck In The Middle With You」で使われる手拍子のパターンは、定番パターンを前後逆にしたものといえるでしょう。

Rolling Stone Japan 編集部

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