手拍子のリズムパターン、クイーンやスライの名曲から鳥居真道が徹底考察

パターン4「オリジナル」



その曲固有の手拍子のパターンを大きく「オリジナル」とまとめました。たとえばストゥージズの「No Fun」やミーターズの「Hand Clappig Song」、ローズ・ロイスの「Car Wash」に登場する手拍子のようにその曲を特徴づけるパターンを総称して「オリジナル」と呼んでいます。他にもサイモン&ガーファンクルの「Cecilia」やヴルフペックの「Animal Spirits」も同じカテゴリに分類できるでしょう。「Animal Spirits」のライブ盤ではかなり研ぎ澄まされたオーディエンスによるタイトな手拍子を聴くことができます。

パターン5「複合」



読んで字のごとく複数のパターンが合わさった例です。このパターンはまだ探せていない状態です。例を挙げると、ニーナ・シモンの「Sinnerman」の間奏部分やファレル・ウィリアムスの「Happy」のブリッジで確認できます。音自体は匿名性があるものの、同一のパターンに比べると複合パターンの場合は個人の気配が感じられます。群れというよりチームという感じでしょうか。

パターン6「合いの手」



歌の合間に入れられる手拍子を合いの手と分類しています。代表例はアウトキャストの「Hey Ya!」です。テイラー・スウィフトの「Shake It Off」のコーラスには「Hey Ya!」と同様のパターンが登場します。おそらく意識してのことでしょう。ハンドクラップということでいえば、シャーリー・エリスに「The Clapping Song」というその名もズバリな曲がありますが、この曲は「Shake It
Off」の遠縁の親戚なのではと考えています。ダリル・ホール&ジョン・オーツの「Private Eyes」も合いの手パターンに分類しても良いと思われます。

手拍子といえば、スナーキー・パピーがタイニー・デスク・コンサートに出演した際に、観客に対して高度な手拍子を求めていたのが印象に残っています。

手拍子の腑分けをしながら実際に自分でも手拍子を打ったわけですが、やはり一人の手拍子は寂しく感じられます。自分の発する手拍子の音が会場全体の手拍子の音に溶けるときの感覚を久々に味わいたい昨今であります。



鳥居真道



1987年生まれ。「トリプルファイヤー」のギタリストで、バンドの多くの楽曲で作曲を手がける。バンドでの活動に加え、他アーティストのレコーディングやライブへの参加および楽曲提供、リミックス、選曲/DJ、音楽メディアへの寄稿、トークイベントへの出演も。
Twitter : 
@mushitoka / @TRIPLE_FIRE

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Rolling Stone Japan 編集部

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