―ヴァレンタインにはテープ・レコーダーもありますし、コンソールも古いものが置かれているみたいですね。
チェスター:古い機材を使うのは僕たちの狙いの一つなんだ。僕たちの今までの作品は、その大部分をテープで録音している。今回も同じような感じで、アナログの機材を使えるのであれば、なるべくアナログでやりたいと思っていた。自分たちが若い頃、テープを使いたがっていたのは、テープの方がデジタルよりも音が良くて、テープの音が最高だと思っていたから。それは今でも多くの場合そうだし、自分でも未だにそう思っているんだけど、そもそもテープで録音するというアプローチ自体が特別であることに気づいたんだ。なぜなら、自分の演奏に確信を持たなければいけないということだから。つまり、演奏中の小さなミスやズレを気にしたりすることができない。そんなことを気にし始めたら頭がおかしくなっちゃう!(笑)。テープの性質上、編集するのがほぼ不可能だからね。
―ディアンジェロの『Voodoo』は、同じくタイムカプセルのように残されていたエレクトリック・レディ・スタジオで、テープ・レコーディングされた音源を編集したアルバムですよね。今回の『Talk Memory』におけるアナログ的な制作プロセスは、 『Voodoo』とも通じるものがあるような気がします。
リーランド:それは嬉しい褒め言葉だね。ディアンジェロからは録音プロセスという直接的な影響も受けているし、サウンド面でも影響を受けている。それから『Voodoo』と今回のアルバムは実際に繋がりがあって、僕たちもラッセル・エレヴァードにミックスしてもらったんだ。ラッセルが関わる作品には、彼独自の美意識や雰囲気が加えられている。それに彼のミキシングは全てアナログで行われるんだ。僕たちのアルバムに貢献してくれて光栄に思っているよ。
ラッセル・エレヴァードがディアンジェロ楽曲のミックスを解説する動画。ラッセルはエリカ・バドゥやコモン、カマシ・ワシントンやトム・ミッシュなどの作品にも携わっている。
Translated by Emi Aoki