バッドバッドノットグッドが極意を明かす 懐かしくも新しいサウンドメイクの秘密

ディアンジェロとの共振、アナログへの愛情

―GoPro Musicの動画では、広い部屋で一緒に音を出しながらセッションしたり、その場で意見交換しながら曲を作っている様子が映っていました。スタジオの環境は新作にどのように作用していると思いますか?

リーランド:僕たちはアナログ機材でのレコーディングを以前からやってきたけど、今回はヴァレンタインでニックと一緒に録音した。そのプロセスはかなり制限されていたのと同時に、かなり意図されたものだった。今回のレコーディングもGoPro Musicの動画と同じような方法で行い、メインとなるトラックは全て、わずかな仕切りで区切られた1つの部屋でライブ録音している。

チェスター:ニックの仕事はデジタル録音とほぼ真逆で、作業がとても早いんだ。僕たちが即興するように、彼も即興で作業しているみたいだった。例えば、僕たちがスタジオで曲をリハーサルしているのを彼は録音して、「もう全部録ったよ!」なんて言ったりする。彼は僕たちのスタジオでの動き方とぴったり息を合わせて作業してくれたね。

リーランド:アルバムの収録曲で一番すごかったセットアップは、「Talk Meaning」という最後の曲を録音した時で、ドラムキットにマイクを3つ、ベースアンプにマイクを1つ、そしてテラス・マーティンと僕が1つのマイクをシェアして、2人でサックスを同時に演奏した。そういう方法でレコーディングしていると、その時に生まれる音にコミットすることになる。僕たちの場合はエンジニアの腕も良かったし、スタジオの空間からも素晴らしい音が響いたから恵まれていたと思う。その時、その瞬間に生まれたエネルギーを大切にしようという姿勢になるのも素敵だったね。

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―ヴァレンタインにはテープ・レコーダーもありますし、コンソールも古いものが置かれているみたいですね。

チェスター:古い機材を使うのは僕たちの狙いの一つなんだ。僕たちの今までの作品は、その大部分をテープで録音している。今回も同じような感じで、アナログの機材を使えるのであれば、なるべくアナログでやりたいと思っていた。自分たちが若い頃、テープを使いたがっていたのは、テープの方がデジタルよりも音が良くて、テープの音が最高だと思っていたから。それは今でも多くの場合そうだし、自分でも未だにそう思っているんだけど、そもそもテープで録音するというアプローチ自体が特別であることに気づいたんだ。なぜなら、自分の演奏に確信を持たなければいけないということだから。つまり、演奏中の小さなミスやズレを気にしたりすることができない。そんなことを気にし始めたら頭がおかしくなっちゃう!(笑)。テープの性質上、編集するのがほぼ不可能だからね。

―ディアンジェロの『Voodoo』は、同じくタイムカプセルのように残されていたエレクトリック・レディ・スタジオで、テープ・レコーディングされた音源を編集したアルバムですよね。今回の『Talk Memory』におけるアナログ的な制作プロセスは、 『Voodoo』とも通じるものがあるような気がします。

リーランド:それは嬉しい褒め言葉だね。ディアンジェロからは録音プロセスという直接的な影響も受けているし、サウンド面でも影響を受けている。それから『Voodoo』と今回のアルバムは実際に繋がりがあって、僕たちもラッセル・エレヴァードにミックスしてもらったんだ。ラッセルが関わる作品には、彼独自の美意識や雰囲気が加えられている。それに彼のミキシングは全てアナログで行われるんだ。僕たちのアルバムに貢献してくれて光栄に思っているよ。


ラッセル・エレヴァードがディアンジェロ楽曲のミックスを解説する動画。ラッセルはエリカ・バドゥやコモン、カマシ・ワシントンやトム・ミッシュなどの作品にも携わっている。

Translated by Emi Aoki

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