松本隆がアイドル界・歌謡曲界に変革をもたらした70年代後半から80年代を辿る



1976年7月に発売になりました。森山良子さんのアルバム『日付のないカレンダー』。このアルバムのことは、8月にフィリップス・レコードの本城和治さんの特集をお送りした時に本城さんにも話を聞きましたね。ディレクターは本城和治さんなんです。森山良子さんの50年以上のキャリアの中で、たった1枚だけ全曲の詞を1人の作詞家に依頼したというのが、この『日付のないカレンダー』。松本さんが全曲の詞を書いております。プロデュースも彼ですね。森山良子さんはカレッジフォークで、松本さんははっぴいえんど、日本語のロックで同じ時代にありながら、なかなか交わることがなかった二人です。ただ、松本さんは学園祭で良子さんを聴いて感動した経験があって。同じように東京・渋谷近辺で青春を過ごしていた同世代の1人の女性の人生を振り返るようなアルバム。歌詞の中に〈路面電車〉が出ていたでしょ。これは松本さんと森山良子さんの共通項、お互いの思い出でもあるんですね。

「小さな歴史」は曲も森山良子さんです。良子さんが自分で書いた曲は本当に少ない。これも松本さんが「自分で曲も書いてみたら?」ということで、この曲が誕生しました。このアルバムのジャケットは矢吹申彦さんのイラストレーションなのですが、女性が赤ん坊を抱いているんです。ちょうど良子さんが妊娠している時のアルバムで、良子さんが抱いている赤ん坊は森山直太朗さんになるというアルバムであります。70年代の松本さんが全曲を書いたアルバムにはいろいろな実験が行われておりまして、その中にこの人もいました。

Rolling Stone Japan 編集部

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