ブリング・ミー・ザ・ホライズンが語る、「フューチャー・エモ」で若い世代と共鳴する理由

「未来というものは次の世代の手の中にある」

ー2000年代のロックを今のポップ・ミュージックやヒップホップと融合するような試みは、すでにトラヴィス・バーカーを筆頭に、いろいろ手がけているアーティストがいますが、エモとは言ってもポップ・パンク寄りですよね。daineの曲を聴いて思ったのですが、同じエモでも、よりダークなゴシックやニュー・メタルの要素が強いところが新しかったです。

オリー:言ってみればノイズだよね。ノイズって中毒になりやすいもので、僕もノイズを求めてどんどんエクストリームな音楽が好きになっていったんだ。例えば、スパイシーな食べ物を食べ続けてると、さらにスパイシーなものが食べたくなるよね。音楽も同じで、さらにノイズ求めると止まらなくなるんだよ。daineの曲は、結果としてノイズの新しい表現方法となったんだ。スゴく中毒になるものだし、僕が音楽に求めるのはこういうことなんだ。

ー「DiE4u」に話を戻したいのですが、歌詞のアプローチが『ポスト・ヒューマン:サバイバル・ホラー』の時とまた変わりましたよね。『ポスト・ヒューマン:サバイバル・ホラー』ではコロナ禍の世界でどう前に進むのかということをテーマにしていましたが、「DiE4u」では依存や執着、中毒といった、非常にパーソナルなことをテーマにしています。<ポスト・ヒューマン>の第2フェーズではどのようなことを歌詞のトピックにしていますか?

オリー:「DiE4u」はスゴくチャレンジでもあったね。『ポスト・ヒューマン:サバイバル・ホラー』では、パンデミックの状況をテーマにして、パンデミックによって引き起こされたエモーション、つまりパニックや恐怖、混乱、罪の意識、恥の意識、隔離といったものを扱ってきた。パンデミックの最初の波が来た時、「何が起こってるんだ?」「自分たちの未来はどうなるんだ?」「自分の存在はどうなる?」「自分は何者なんだ?」って、みんな怒ってたし、恐れてたよね。僕もその気持ちはよくわかったから、歌詞にするのは簡単だったんだ。それで、「僕たちは恐れてる。怒ってる。混乱してる。もし混乱して怖いのなら、こっちに来なよ。この音楽を聴いて、歌って、この経験を共有しよう」っていう感じで問いかけたんだ。そこで表現したのは感情であり、抗議デモみたいなものだったんだ。でも「恐れてるの? 一人ぼっち? こっちに来なよ」って言ってしまった以上、今やオーディエンスは僕のことを見てて、「OK。じゃあこれから何をしたらいい?」「どう理解して、どう前に進んだらいい?」ってなるわけだ。だから、「DiE4u」は、そういうみんなが知りたがってる問いに僕が答えられるよう、僕がベストを尽くせるものにしようと思ったんだ。

僕はかつて、悪い習慣や中毒という問題を抱えてた。良い時もあるし、悪い時もあるけど、自分はOKなんだって思い込んでたんだ。だけど、決して最高だとは思えなかったし、完璧だとも思えなかった。パンデミックになった時、昔の自分に戻ってしまうんじゃないかという恐怖があったんだ。今の時代、自分自身に思いやりの気持ちを持てない人はたくさんいる。自分自身でバランスを取れるなんて信じてないんだ。これが自分の人生なんだって言い聞かせて、虐待的な状況を正当化する。だからこの曲は、自分のことを変えられるのは自分自身しかいないんだということ、自分が変わろうと思わない限りは悪い執着や習慣は終わらないということを歌ってるんだ。次のEPはこういうことがテーマになるよ。大きな目で見れば、地球という惑星、そしてヒューマニティ、社会というものがテーマになるんだけど、人間が自分以外の世界に対してもリスペクトと思いやりを持てたら変われるんだということも伝えたいんだ。

ーいろいろ人生の経験を積んできたからこそ、多くの人たち、特に若い世代に対して、伝えたいこと、共有したいことが出てきたんですね。

オリー:そうだね。ハッキリしてるのは、未来というものは次の世代の手の中にあるということなんだ。僕がキッズの頃は、今の時代の人々が持ってるようなパワーを自分が持てるとは思えなかったんだ。僕はよく「変えられるわけないじゃん」って言ってたよ。だけど、若い世代が証明して見せて、人間の平等とか進化とか、いろんなことが変わっていったよね。僕はそれを見てるから、未来に向かう次の世代のパワーを信じてるんだ。僕も34歳になって、キッズが感じるプレッシャー、人生で経験しなくちゃいけないことがよくわかる年になった。だから若い世代をサポートしたいんだよね。振り返ってみると、僕が20歳の時には、バンドはまだビッグではなかったにしろ、インタビューを受けるくらいの存在にはなってたから、人々は僕のルックスとかアティテュードとか、僕のすべてに対していろいろ意見を言ってた。それって当時の有名人の抱える問題だったんだけど、今ではすべての人にその問題がのしかかってる。SNSが普及してからは、自分が過去に投稿した内容の責任を問われるようにまでなった。今ではどのキッズもその問題を避けて通れなくなったんだ。公衆の目に晒されることによって生まれる苦痛は、僕が昔さんざん経験したことだけど、今はどのキッズも経験してることだ。何が重要で、何が重要でないか、そこをきちんと分けられるようナビゲートしてあげたいんだよね。若い世代にアドバイスをあげたり、助けたりすること、それが次のEPのテーマになると思う。



<INFORMATION>


Bring Me The Horizon | ブリング・ミー・ザ・ホライズン
最新シングル 「DiE4u | ダイ・4・ユー」 配信中
https://sonymusicjapan.lnk.to/BMTH_DiE4URS

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