ヘヴィメタル/ハードロック伝説 KISS、ガンズ、メタリカ等の知られざる素顔を増田勇一が語る

増田氏が所有するバックステージパスの一部



パンテラ「俺は臭くないから大丈夫」

 『カウボーイズ・フロム・ヘル』を90年に、『俗悪』を92年にリリースしたパンテラの初来日は、その年の夏のことでした。そのときのオープニング・アクトは日本のOUTRAGE。笑ってしまったのが彼らの楽屋。部屋中がバーベルだらけだったんです。腹筋台なんかも並んでて、OUTRAGEのメンバーも一緒になってやっていたので、「ここはジムか?」という感じでした。

その際、僕は、夏物の薄いパーカーを着てライブを観に行ってました。終演後、楽屋まで挨拶をしに行って、「いやあ、素晴らしかったね」なんて話をしていたら、ヴォーカルのフィリップ・アンセルモが僕のパーカーを指差して、「これ、いいね。欲しいんだけど。ちょっと着てみてもいい?」と言ってくるわけです。もちろん、ライブ後なので汗だく。こっちは「え……?」という顔になりますよね。それを察知したフィルが「いや、俺は臭くないから大丈夫だよ!」と言うので、さすがに「ああ、そんなこと気にしてないよ」と渡したら、鏡を見ながら「いいなー、いいなー」と言っていて、「もしこれを俺にくれるなら、君が欲しいものを何でもあげるよ」と言うんです。そこで、「いや! あげてもいいんだけど、これをあげちゃうと今日僕が着て帰るものがなくなるから、君たちが日本にいる間に同じものを買って持って行くよ」と約束したんです。フィルは「本当か? うれしいよ。なんでもあげるから」って。

後日、同じパーカーを丸井のスパークリングセールで買って(笑)、フィルに進呈したところ、とても喜んでくれて、「何をあげたらいい?」と聞いてきたので、「読者プレゼント用にパンテラのTシャツをたくさんちょうだい!」とお願いして、10枚ほどもらうことができました。そのときに「ひとつだけ約束してほしいんだけど、ほかの雑誌の取材ではそれを着ないでもらえるかな?」とお願いしたら、「おお、もちろんもちろん!」と彼は快諾。

その次の日のライブで僕が前のほうの列で観ているときに、ステージ上の彼に見つかって、「『BURRN!』のお前じゃないか! ごめん、今日撮影があるって知らなくてお前からもらったパーカー着ちゃった! 許してくれるか?」とマイクを通して言われてしまうというオチがつきました。まわりのお客さんはわけがわからずポカーンとしてましたが。

その初来日の際、『BURRN!』では初めてフィルを表紙にしています。実は、その号では別のアーティストが表紙候補になっていたんですけど、それがボツってしまい、代わりにパンテラになったんです。そこで普通にアンセルモを撮っても面白くないので、彼がそれ以前の記事の中でマーシャルアーツについて話していたことを思い出して、柔道着を着てもらおうということになりました。でも、彼はTシャツの上から道着を着てしまって、そうするとどうしても総合格闘家みたいに見えてしまう。だから、通訳さんを通じてTシャツを脱いでもらえないかお願いしたんですけど、「いや、俺はマーシャルアーツにリスペクトがあるから、モノマネみたいなことはやり

たくないんだ」とまっとうな理由を言うんです。そこで僕がかくかくしかじかで……と伝えたところ、「……わかった」とすぐに脱いでくれました。何を彼に伝えたかと言うと、「『BURRN!』では少し前にロブ・ハルフォードに侍の格好をしてもらって表紙の撮影をしたことがある。今回の表紙はそれと同じぐらい神聖なものだと捉えているんだ」ということだったんですが。

当時のフィルには、ちょっとイキがりたい性質があったように思います。続く『脳殺』というアルバムのときに「MUSIC LIFE」の表紙を彼一人で飾ることになりました。取材が行われたのはちょうどアルバムリリースの翌週で、全米初登場1位を獲得することがわかったときだったんですけど、彼はそれを知った途端に機嫌が悪くなってしまって、その日に撮った写真は全部むくれた表情になってしまったんです。「俺たちは数字でジャッジされるためにバンドをやっているわけじゃない」みたいなことを言い始めて、撮影も途中で切り上げられてしまって、こっちとしては「何故そこで不機嫌になる?」という感じなんですが、巻頭ページを埋めないといけないので、そんな空気の中で一問一答みたいなインタビューを1時間やりました。でも、なんだかんだで彼はけっこう喋ってくれるんですよ。「俺は数字でジャッジされたくないんだ。撮影も嫌いだ。写真一枚でどんなバンドか決めつけられるのは嫌だ」「だからこそこうやって喋らないといけないわけですよね」「そうだ」みたいな感じで、なんとか会話が途切れないように続けていったんです。それを見ていた現地のレコード会社の担当女史が「彼はあなたには心を開いていると思うわ」と言ってくれたんですけど、こっちからすると「あれで!?」という感じでしたね。




パンテラのフィリップ・アンセルモ。写真は文中に出てくる『BURRN!』表紙撮影時のもの。(Photo by Gutchie Kojima/Shinko Music/Getty Images)

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