ヘヴィメタル/ハードロック伝説 KISS、ガンズ、メタリカ等の知られざる素顔を増田勇一が語る

増田氏が所有するバックステージパスの一部



ジューダス・プリースト「話の内容と口調のギャップ」

僕にはジューダス・プリーストの取材をする機会がなかなか回ってこなくて、ロブ・ハルフォードに初めて対面取材をしたのは一昨年の11月に来日したときが初めてだったんです。とても丁寧に対応してくださって、こちらが恐縮してしまうくらいでした。

でも、実はそれ以前に電話インタビューをしたことがあって、彼がファイトとして活動していた94年に『MUSIC LIFE』で取材したんです。僕は自宅で待機していて、「ああ、そろそろ時間だな。ロブはちょっと几帳面そうだし、時間通りにかかってくるだろうな」と思っていたら、定刻を3分過ぎたぐらいに電話が鳴りました。「ハロー?」と電話に出ると、“Hello? Can I speak to Mr. Masuda, please?  Hi, this is Rob Halford speaking. Am I calling you at the right time?”(増田さんとお話ししたいんですが、時間は合っていますか?)という具合にすごく丁寧な口調で話してくるので、喋っている内容と口調が実にアンバランスで。“Yes! This is a new form of heavy metal!(そう、これはメタルの新たな“型”なんだ)“なんてことをすごく格調高いイギリス英語で言うんです。そんなふうにしてインタビューが終わったあと、僕は気づきました。うちの時計が3分進んでいたんです。ロブはしっかり定刻に電話をしてくれていたんですね。

昔は今とは時代が違って、彼は自分がゲイだということを公表しにくい風潮があった。よく覚えているのは、84年に『背信の掟』というアルバムでジューダス・プリーストが来日して、初めて日本武道館でやったときのこと。当時の担当ディレクターは、「初の武道館だし、ここで一気にデカくするぞ!」と気合の入った紙資料をつくったんです。そこには「ジューダス・プリーストのここがすごい!」みたいなことがたくさん書いてあったんですけど、一箇所だけマジックで黒塗りになっていました。そこに何が書かれていたのか気になって透かしてみると、「ロブ・ハルフォードはゲイであり」と書いてある。「ああ、隠さなきゃいけないんだね……」と。今や自伝の中でも赤裸々に語っているわけなんですが。



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アイアン・メイデン「髪型エピソードが爆笑された理由」
 
アイアン・メイデンを取材したことはそんなにないんですけど、ブルース・ディッキンソンがソロでプロモーション来日したときの発言で、その場にいた全員が大爆笑したことがありました。90年代半ばのことですね。それまで長髪だったブルースが髪を短くして、「キープ・ザ・フェイス」の頃のジョン・ボン・ジョヴィと同じような髪型をしていたんです。すごくすっきりしたヘアカットで、革のロングコートを着て後ろを向いているとジョン・ボン・ジョヴィそっくりなんだけど、こっちを向くとやっぱりブルース。それが面白くて、「随分イメージが変わりましたね」と伝えると、「いや、これは楽だし、うちのかみさんも気に入っているんだよ。『別の男と寝てるみたい』って」。「それ、喜んでいいんですか?」という話になって、みんな「ん?」と一瞬だけ沈黙し、その直後、大爆笑になりました。ブルースは聡明な人で、聞き取りやすい英語で理路整然と喋ってくれる姿が印象的でした。

あと、暗黒時代扱いされているブレイズ・ベイリーの話もあります。彼がプロモーション来日したとき、新人なのに“俺様”な態度だということで悪評が立ったんです。でも、それには理由があって、自分が露骨に新人扱いされていたからでもあったらしいんです。僕は彼がメイデンの前に所属していたウルフズベインというバンドがメイデンの前座をやっているのをイギリスで観たことがあって、彼らの作品のライナーノーツを書いたこともあったんです。そのことをインタビューで本人に伝えたら、「じゃあ、俺たちのことをよくわかってるんだね!」と食いつきが全然違って。デカいバンドに入った新メンバーの複雑な心境をその一瞬に感じましたね。スティーヴ・ハリスと並んで喋ると、どうしても向こうのほうが弁が立つわけで、取材者の側も彼にばかり質問し、ブレイズには「メイデンに入れてどんな気分ですか?」みたいなことばかり聞いてくる。そういうことが重なっていくうちに次第に感じが悪くなってしまった。ジョン・ボン・ジョヴィも最初の頃はそうだったと思うんですよ。自分のバンドだけど、音楽的な話はリッチーのほうが喋れたりするわけですからね。



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