松本隆が描いたエロティシズム、80年代後半から90年代前半までを辿る

探偵物語 / 薬師丸ひろ子

1983年5月発売のシングル、薬師丸ひろ子さんの「探偵物語」。大滝さんの曲が続きます。松本さんは何も言わなくても通い合っている分身のような作曲家として3人名前を挙げておりました。1人が大滝詠一さん、もう1人が細野晴臣さん、そして筒美京平さんという3人です。大滝さんと組んだシングルの中では「探偵物語」が1番売れたシングルになりますね。〈波のページをめくる見えない指先〉ですよ。こういう歌詞が1番売れた曲の中に織り込まれているのが日本のポップスの質を高めたと言える、1つの証しでしょうね。

薬師丸さんのデビューは「セーラー服と機関銃」ですね。薬師丸さんはもともと音楽に対してはそんなに惹かれてなかった。松本さんとの対談があるんですけど、その対談は本に引用していますが、「歌の世界はミニスカートを履かされて、何かをやらされると思っていた」という話をしているんですね。「セーラー服と機関銃」も相米慎二さんという監督が「お前も歌ぐらい歌ってみれば?」という話の横で、相米組の映画の若者たちが宴会をしているという始まりだったらしいんです。薬師丸さんは「探偵物語」の詞を見て、子ども向けの歌詞じゃないのがうれしかったというふうに話しておりましたね。松本さんがバイク事故で入院していた時に書いた曲でもあるわけで、歌詞の中に入院していた時の情景なんだろうなと思うフレーズも出てきます。よく松本さんが95%の虚構と5%の真実と言っているのですが、そういう5%の真実が歌いこまれている曲でもありますね。

大滝さんに対しても、自分の気持ちを歌いこんでいる5%の真実の歌がある。1984年3月に発売になった大滝詠一さんのアルバム『EACH TIME』の中の「1969年のドラッグレース」。

Rolling Stone Japan 編集部

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