松本隆が描いたエロティシズム、80年代後半から90年代前半までを辿る

仮面の告白 / 中原理恵

中原理恵さんの1979年のアルバム『夢つれづれ』の中の「仮面の告白」。これは歌詞をじっくりお読みいただくと、深いですねー。女を愛せない男。どういう男性なのか。そして、この歌の女性がどういう女性なのか。いろいろ想像してみたくなる曲ですね。これは1979年のアルバムなので、さっきの中山美穂さんの『EXOTIQUE』よりもちょっと前になるんですけど、松本さんは70年代のアルバムからエロティシズムをテーマにしていた、これも実験ですよね。「仮面の告白」は作曲が穂口雄右さん。キャンディーズの「春一番」や、何よりもアグネス・チャンの「ポケットいっぱいの秘密」の作曲家。つまり、松本さんの作詞家のきっかけになった曲を書いている作曲家と一緒にこういう曲を作って。アルバムは筒美さんと穂口さんで半々で書いている。エロティシズムをテーマにして作ったアルバムだったんですね。日本のポップミュージックの中で、手をつけられていないジャンルの一つがエロティシズムがあるわけで。セクシーはいっぱいあるんです。でも、エロスがテーマになっているのは本当に少なくて。松本さんのこの後のクミコさんのアルバムはそういう色彩がとても濃くなっていますね。

で、松田聖子さんとは、「瑠璃色の地球」が入っていた1986年に『SUPREME』のアルバム、1987年に『Strawberry Time』、1988年に『Citron』とプロデユーサーとして関わって、一旦離れるんですね。『Citron』の中には「抱いて・・・」という曲もありましたけど、あの曲も聖子さんの中では1つのエロスをテーマにした曲と言っていいでしょうね。この『Citron』は聖子さんと別れの手紙のような、そんなアルバムでありました。その後、松本さんは1989年から休憩、お休みに入るんですね。

そんな時期に出たアルバムからお聴きいただきます。五郎部俊朗さんで「菩提樹」。

Rolling Stone Japan 編集部

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