松本隆が描いたエロティシズム、80年代後半から90年代前半までを辿る

悲しみの果て / 大竹しのぶ

1993年11月に発売になりました。大竹しのぶさんのアルバム『天国への階段』から「悲しみの果て」。曲はベートーベンの「悲愴」ですね。アルバムの中ではモーツァルト、メンデルスゾーン、サラサーテ、ショパン、そういうクラシックの作曲家の曲が選ばれていて、松本さんが詞をつけております。大竹しのぶさんは1曲レコーディングをするごとにハンカチに目を当てていたというふうに松本さんがライナーノーツで書いておりました。

先々週かな、当時の音楽業界にはあっち側、こっち側という境界があって。芸能界とフォークやロックの世界が全く分けられていた話がありましたが、やっぱりポップスとクラシック間にはさらに大きなあっち側、こっち側という境界線があったんだなと思いますね。シューベルトの『冬の旅』と大竹さんの『天国への階段』は同じクラシック担当のディレクターがお作りになったのですが、そのレコード会社は松本さんとの付き合いがあまりなくて、ポップスの世界のディレクターが俺たちが松本隆と仕事ができないのに、なんでお前がやるんだと言われたという話をしておりました。

クラシックの世界からも、歌謡曲の作詞家が何をやっているんだという目で見られて、ポップスの人たちでも妙なことをやっているねと見られたりして、あまり評価されなかったという2枚のアルバムからご紹介しました。シューベルトには他にも「美しき水車小屋の娘」という作品と「白鳥の歌」という歌曲の作品があるのですが、松本さんはこの後、時期がちょっと離れるのですがその2枚も日本語詞をつけて完結させてますね。

Rolling Stone Japan 編集部

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