清春が語る、ライブエンタメの当事者として感じた違和感

清春



「国に対してどうこう言う前に、現場に意見を言うべき」

―そこは自分の首を絞めるから、アーティストは思っていても言わないようにしてのかもしれないです。

僕はイベンターにも言ってたんですよね。なぜ大きな会場から先に目を向けるわけ?って。気づく人がいても、言える人がいないんでしょ。僕の場合、活動の形態上、言える立場にあるので言っちゃうけど。でも、アーティストが思ってても言わない。当然、事務所の人達も言わせない。そういう図式なんでしょうね。

―それは正直あると思います。

国に対してどうこうなんていうのは、ミュージシャンじゃなくてもみんな意見あるわけだけど、もうひとつ言うべきは現場のことなんじゃないんじゃないかな。

―ミュージシャンが歌い続けてこられたのは、ファンがいるからであって……。

あと、自分達はCDやグッズとかを売ればいいけど、ライブをやらないとご存じの通り、楽器スタッフや機材の輸送業者や各地のイベンターとかが困る。この人達が食っていけなくなるって主張する人達がいっぱいいるんですけど、だったら配信でもいいんですよ。イベンターは他の興行もあるし、そもそもお金を持ってる会社なら今すぐ助けなくていいし。誰を助けるか、先に大変な人を助けるってことを考えれば、ライブはリアルじゃない方がいいんです。そんなの当たり前のことなんですよ。お客さんが入って、お客さんのチケット代から数パーセント僕ら収益があって、その中から楽器スタッフや輸送業者のギャラを払ってるわけなので。お客さんをまともに入れられないなら、その人たちに払えないのは想像できるでしょ? だったら無観客の方がいい。お客さんには配信チケット代を払ってもらう。会場に来ないから危険を犯さない、クラスターも出ない。スタッフのギャラも会場にも満額払えるっていうことを、なんでもっとでかいアーティスト達がやらないのかっていう感じはありますね。

―確かに。実際、清春さんは、ライブハウスで行う配信のみのライブを何度もやっていますが、そういう理由だったんですね。お客さんの差をなくす、苦しんでいる小さいところから助けるっていう。

ツアーとかは、本当は最後に戻って来なきゃいけないものなんじゃないかって思いますね。僕らがやっているのは音楽を一番大事に思ってくれる人がたくさんいてくれるからこそできる仕事なんですけど、僕らだけが“プレイしたい”じゃダメなんですよ。全部が復旧されて、どこに行くにも不自由がなくなって初めて、衣食住の後に音楽がくるんじゃない? そう言うと、美空ひばりさんが戦時中に歌を歌って、心が癒されたって言うのが出てきますけど、それってほぼお金を取ってないわけです。震災の時みたいに、被災地に行って歌を歌って癒すのとは、今回は違うわけですよ。ボランティアとも違ってちゃんとお金を取ってるわけなので。

―そうですね。音楽ビジネスの話ですもんね。

中には座席数を半分にした分、チケット代を倍取るのもいる。それ全然おかしいんじゃない?って俺は思います。“今回はしょうがない”“今回っていつまでなの?”って思うし。僕の配信ライブの値段は、その価値があると思って設定しています。リアルタイムで視聴した後にダウンロードもできるし。でも、価値がないものに倍の値段を払うとか、来ていないお客さんの分まで払うっていう発想はあんま正しくはないですよ。ビジネスマンとしては正しい……というか損得勘定としては正しいですけど。

―音楽が果たしてそれでやり続けていいのか?ってことですよね。

逆にチケット代を安くするとかそういう問題でもないんですよ。高くしようが安くしようが別にいいんです。プレイに価値のないものに倍払うのはおかしいし、価値があるものだったら払ってもいい。その価値はファンの人が決めるので、世の中は関係ない。だから僕は配信に関しては精度をあげていきたいんですね。いつ見てもおかしくないものにしたいし、以前に見てくれた人のために、次もより良いものにしたいと思う。それを忘れないでいようと思います。自分達が楽になりたいからライブしたいだけなのは良くない。

―厳しいけど鋭い指摘だと思います。

ライブをやることで幸せになる人はいますよ。けど、ウチの場合はそこでできてしまっている差や溝をまず正したい。別にライブをやりたくないわけじゃない。本当は普通にライブをやりたいんです。だけど、まずはその差や溝をなくさなきゃダメだとは思う。シンプルにライブに来たい人は全員が来れるようにしないと。ライブ配信とリアルライブを比べたら、そりゃリアルの方がリアルに決まってますよ。でも別種類の表現を追求し続けていくのは楽しくもある。これを昇華させないと、なんのためにこれまでコロナ禍で表現活動していしていたのか分からない。

―なるほど。

たぶん僕が言ってること理解できない人がいっぱいいると思う。やってない人には全く分からない。もちろん僕が間違ってるかもしれないし、この期間にリアルなライブに行って感動した人は“そうじゃない”って思うでしょうね。でも僕は自分がファンの側だったら、コロナにかからないように対策してほしいというより、“お金を払ったのになんでこんな思いをするんだ?”っていう方に気が行きますけどね。

―買ってくれている側に負担を押しつけてしまうような関係性って、確かにいびつですよね。なぜそのいびつが成立しちゃうんでしょうか?

それは、音楽に形がないからだと思います。物だったらそれは不良品で成立しない。別に反論を繰り出すわけじゃないけど、僕はこうだっていうだけであって。ライブをやっている人はやっている人で、ライブに行って幸せな気持ちになった人もたくさんいると思うから、いいと思うんです。僕も去年の頭ぐらいは「絶対に100%で普通にやる」って言い張ってたんですよ。それに対してマネージャーは「大丈夫ですかね?」みたいな感じだったんですが、僕は「やれるでしょ」と思っていました。で、元気な人だけ来てくださいって言ってたんです。でも、この1年半でそれじゃダメになった。体が元気でも、みんな色んな障壁を乗り越えて来るんです。完全に突破できる人と、できない人がいるんですよね。そこを突破できた人が会場に来てる感覚もあるけど、突破したかったのに50%に制限しているチケットが当たらなかった人も多くて。それは完全にこの国のコロナのせいじゃないですか。そうした問題を結局一番クリアにできるのは、現状はストリーミングしかないんですよ。そこでライブとは違う芸術作品を作ってやるしかなくて。そうしていく上で、セッションになってくるんですよね。その人しかできないものを最高の状態で提供したいって気持ちになっていく。音は同じ空間で聴いていないけど、生きている姿を見せるっていうことで言うと、毎回リアルライブで同じ演奏を聴かされるよりも、毎回、何かうごめいていることが伝わる。そこに懸けたいんですよね。音量とか音圧がない分、より別のうごめきを。リアルをやりたい気持ちは分かりますし、行きたい気持ちも分かるんですけど、配信では伝わらないとか言って逃げてちゃダメですよ。演奏する事には変わりないんですから。

<INFORMATION>


「ガイア」
清春
デジタル配信中
https://linkco.re/xmEgGg4Z?lang=en

THE BIRTHDAY
2021年10月29日:東京・恵比寿ガーデンホール

エレジー イン ヨコハマ
2021年10月30日:神奈川・ビルボードライブ横浜

残響
2021年11月27日:東京・紀尾井ホール

NEW YEAR COUNTDOWN
2021年12月31日 - 2022年1月1日:東京・ZEPP CIVER CITY

A NEW MY TERRITORY 2021
2021年11月11日、12日:東京・新宿LOFT
2021年12月24日:神奈川・Yokohama Bay Hall

清春 公式Twitter
https://twitter.com/ki_spring

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