筋肉少女帯が語る、自分たちが描いてきた世界になってしまった戸惑いと使命感

―1曲目「楽しいことしかない」は、〈楽しいことしかないよこれから〉〈やなことのあと いいことはある〉という、ポジティブなメッセージが胸に迫ります。



大槻:この1年半いろいろあったので、リスナーがこういうことを歌ってほしい時期なんじゃないかなって、聴いてる姿を想像しながら明るい歌詞にしました。

橘高:デビューして33年以上経つ中で、筋少の1つの特徴として大槻君が歌った後に我々とお客さんがコーラスで返すみたいな、参加型の楽曲が核になっている部分があるんです。今回アルバムを作るにあたってのZoom会議のときに、ライブを想定したコール&レスポンスを入れるのは、こういう状況のときにどうなんだろうという議題が出たんです。そのときに、ライブができることに対する憧憬みたいになってもいいから、我々の強みであるお客さんと作りあげていく楽曲みたいなものはあってもいいんじゃないかという話をしました。今はこうだけど、またライブでみんなでワイワイやろうぜっていうのは歌詞のニュアンスにも出ていて、我々もそこを信じて制作していました。

大槻:この前向きな明るいサウンドを1曲目に持ってきたことが、今回のアルバムにおける筋少としての大きな変化であり、核になっている部分です。昔、『UFOと恋人』というアルバムを出したときに1曲目は音頭から始まったことがあるんですけど(「おサル音頭」)、それ以来のチャレンジだったと思います。

橘高:はははは(笑)

―「楽しいことしかない」は本城さんの作曲ですが、どんなことを考えて書きましたか。

本城:昨年、いろんなミュージシャンがコロナ禍で何をしているか訊かれて「曲を書いてるよ」ってみんな言ってたんです。それで僕もコロナ禍なりの曲作りをしてみようと思ってトライしたんですけど、どうしても悲観的な気持ちになりがちで良いものになりそうな気がしなくて、1回止めて。そこから1年以上を過ごした結果、何が自分に降りてくるのか、閃くのかということで制作期間になってみたら、意外と前向きな曲が次々とでてきたんです。その中でも、特にこんな時期だからこそやっぱり筋少はツインギターでバーンと派手なロックをやりたいなという気持ちで作った曲です。

―筋少らしさもありつつ、アレンジはとても優しい感じがします。

本城:ありがとうございます。僕はデモテープの段階である程度世界観をスケッチするんですが、聴いてもらう前に橘高君を想定してギターを弾くんです。そのデモをみんなに聴いてもらって、いざレコーディング本番を迎えたら自分が弾くパートがあまりにも少なくてビックリしました(笑)。それぐらい、橘高君パートに魂を込めてデモを作った1曲です。結果、橘高君が素晴らしいギターを弾いてくれたので、僕の思い描いたものを軽く飛び越えてくれました。

橘高:長年やってると、自分以外のメンバーが自分に何をやってほしいのかわかるんです。そこで、「おいちゃん(本城)が思ってる俺はもっとこうじゃない?」って、そこをプッシュする作業もあります。だから自分の曲よりも自分らしくなることがこのバンドは多いんです。期待以上のものを出してメンバーが驚くところが見たいというか、「どうだ、ここまでやると思ってなかっただろう!?」みたいな(笑)

本城:はははは(笑)

橘高:そこは結構このバンドのエネルギーになってますね。歌詞にしても、こっちとしては「こんな歌詞がくると思わなかった、してやられた!」って思う部分があるし。

Rolling Stone Japan 編集部

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