筋肉少女帯が語る、自分たちが描いてきた世界になってしまった戸惑いと使命感

―まさに「ボーダーライン」という曲もありますが、その前のインスト曲「ロシアのサーカス団 イカサママジシャン」から「OUTSIDERS」(電車のセルフカバー)まで、曲ごとの関連性があって終盤に集めているわけですか。

大槻:そうです。聴いてストーリーがわかる話ではないんですけど、この3曲は物語になっていて、「OUTSIDERS」が結末になるようにしています。所謂70年代プログレッシブロックバンドがやる組曲のようなものです。

―「OUTSIDERS」の歌詞に出てくる「ロシアのサーカス団 イカサママジシャン」がインストになっていますが、本城さんは組曲の1曲目としてこの曲を書いたということでしょうか。

本城:いや、タイトルやコンセプトはレコーディングしながら進んでいった話で、もともとは短めのインストを作ろうという計画があって作った曲です。

―途中で会話がうっすら入ってますよね? 音量を上げてヘッドフォンで聴いてもわからないですけども。

本城:あれはみんなでそれぞれ、あることを言っているんです(笑)

橘高:何を言ってるかが見つかれば面白いかもね?っていう楽しみがある曲です。

大槻:想像力を刺激してもらうタイプの曲なので、あえて言葉を聴き取れないように作っているところがあります。筋肉少女帯は、最初にデモテープがきて、それを僕が聴いて歌詞が付けやすいものを選んで、全体の構成を考えていくんです。その中で、「ロシアのサーカス団 イカサママジシャン」は、どういう風に扱うか考えあぐねていたんです。最初はこれにハッキリ聴き取れるセリフが乗るとか、色々あったんですけども、「OUTSIDERS」につながる「ボーダーライン」の組曲の一情景として入れるのが一番いいかなと思って、インストゥルメンタルとして入れました。あと、昔ライブで『猫のテブクロ』というアルバムを曲順通りに再現したことがあるんです。そういうアルバムの曲順通りにやるライブをまたやってみたいなと思っていて、今回はそれを想定して曲順を作っています。これはもしかしたらメンバーにもまだ言ってないかもしれないですけど。

橘高:そういうライブをやってみたいっていうのはなんとなく言ってたけど、このアルバムがそういう構成だとは思ってなかった。

大槻:そうだよね。ライブの曲順を作る者としては、「ここで盛り上げてここで落ち着いて」ということを考えると、アルバムの通りの曲順って上手くいかないんです。それはお客さんのコール&レスポンスで盛り上げていくスタイルのライブだからできなかったんですけど、コロナ禍でお客さんからのレスポンスがないから、ステージでどう進行しても問題なくなったわけなんです。つまり、これもコロナ禍でライブの様相が一変したことで可能になった曲順なんですね。そんな影響もじつはありました。

―とはいえ、最後の「お手柄サンシャイン」は、みんなで声を出して一体になれそうな曲ですよね。

橘高:そうですね、お客さんが一緒にコーラスパートを歌ってくれたりすると。

大槻:この曲は、おいちゃんの作ってきた元のデモが、所謂ポップソングなんだけど、どこか変なところを入れようと思った曲です。突然連続殺人者が出てきて、それをタックルで倒して世界の様相が一変するという。いきなりそういうものをねじ込んでいくという発想は、我ながら筋肉少女帯的だなと思いました。

―最後の方で、〈またぐな飛ぶぞ〉って、長州力語録を2つ合体させてますよね。

大槻:そうです、わかってもらえた(笑)

内田:(“またぐな” は)ボーダーラインだからね(笑)

大槻:あの長州力さんが、こんなお茶の間の人気者になるなんて。本当に世界ってどうなるかわからないなって思います。

―それも世界が変わったことの1つかもしれないですね(笑)

大槻:本当ですよ。人間って、ロックバンドもだけど、いつまでも伸びしろがあるんだなあって(笑)

Rolling Stone Japan 編集部

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE