D.A.N.が語る、多層的な世界に隠されたイメージとリアリティ

D.A.N.(Photo by Taro Mizutani)

前作『Sonatine』からおよそ3年の月日を経て、D.A.N.による待望の新作『No Moon』がリリースされた。通算3枚目となる本作は、かねてより彼らのサウンドに内包されていた「SF的世界観」がより顕著な形で表出。光と闇、生と死、現実とヴァーチャルといった「境界線」を行き来するような歌詞の世界、多層的かつ多次元的なバンドアンサンブルはこれまでになくカオティックかつ肉感的だ。

新型コロナの感染拡大によるステイホームが続き、次第に平坦化していく私たちの暮らしや心を「月が消滅した世界」に喩えながら、それでも次のフェーズを模索する櫻木大悟(Gt, Vo, Syn)、市川仁也(Ba)、川上輝(Dr)の姿が刻まれた本作は、彼らの新境地であり最高傑作といっていいだろう。

─今作『No Moon』は、前作『Sonatine』の頃からあった「SF的な要素」をより強く感じます。以前のインタビューで川上さんが、櫻木さんの歌詞は日常の情景とSFっぽい描写を突然結びつけることで、「今いる場所の揺らぎ」を表現しているとおっしゃっていましたが、今作でもそういった表現が散りばめられていますよね。例えば「Floating In Space」の、“偶然拾った 惑星の破片”というラインだったり、「Bend」ではそれこそ“ファンタジーと現実のあいだ”と歌っていたりしていますし。光と闇、生と死、現実とヴァーチャルといった「境界線」を描いているのは、コロナ禍で「死」をより身近に意識したことによって、それがよりリアルに立ち現れてきた感覚があるからなのかなと思ったのですが。

櫻木大悟:今おっしゃったようなことももちろんそうですし、過去、現在、未来を多次元的に交差させたくなったというか(笑)。いろんなレイヤーがあって、いろんな出来事があって、それに付随していろんなことが派生していくような、そういうマトリックス的なイメージが頭にあり、それを音像化したかったのかもしれないです。

─多元的な世界観というのは、映画でいうと例えばクリストファー・ノーラン監督作『インターステラー』で描いていた4次元超立方体テラサトの空間や、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作『メッセージ』におけるヘプタポッドの時間観念みたいなもの?

櫻木:あるいは、『TENET』の逆行時間とか。もともとそういうものからインスピレーションは受けていたと思うんですけど、より自分たちの演奏やソングライティングのスキルが追いついてきて、音像やアンサンブルとして表現できるようになったのが大きいと思います。例えば、生ドラムとリズムマシンを混ぜていくとか、仁也だったらチェロとかベースをレイヤーしていくとか、それぞれがいろんなレイヤーを持ってきて組み合わせていくことで、今までよりも多層的なサウンドになっていったのかなと。

─なるほど。今作を聴いたときに最初「プログレッシヴな作品だな」と思ったんですけど、様々な展開が1曲の中に組み込まれていたり、アンサンブルがより複雑になっていたりするのは、そういう多層的、多次元的な世界観を表現しようとしていたからなのですね。ちなみにアルバムタイトルの『No Moon』にはどんな由来があるのですか?

櫻木:本作の最後に収録されている曲が、アルバム全体を象徴していると思ってそのタイトルを持ってきました。「月が消滅してしまった世界」を想像して作ったというか。月の持つエネルギーとは全く正反対の波動によって、月が打ち消され失われた世界をこのアルバムでは描いていると思ったんです。

 D.A.N. - No Moon



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