D.A.N.が語る、多層的な世界に隠されたイメージとリアリティ

D.A.N.(Photo by Taro Mizutani)



「今の僕らの状態を、月が消滅した世界にオーバーラップさせている」

─そういえば、アルバムの中でインタールード的な役割を担っている3つのインスト曲には「逆位相」を意味する「Antiphase」というタイトルがついています。逆位相とは、位相が正反対の波を重ねることで、お互いの音を打ち消し合う現象のことですが、今おっしゃった月が消滅する話とも通じますね。

櫻木:まさにそうで、月の正位相に逆位相を合わせると「No Moon」の状態になるという。思えばこの1年半、これまで生きていた我々の波動みたいなものが、コロナによって完全に打ち消されてしまったわけじゃないですか。そういう意味でコロナ禍はまさに「Antiphase」な状態というか。正反対の波動の狭間に立たされて、どんどんしんどくなっていく今の僕らの状態を、月が消滅した世界にオーバーラップさせているわけです。

─まさに『TENET』における、反粒子と粒子の「対消滅」を彷彿とさせます。

櫻木:確かにそうですね(笑)。「消滅する」という意味では確かにイメージは近いけど、ただ『TENET』のように世界そのものが消滅するというよりは、月という象徴的なものがなくなってしまった我々の胸に、ぽっかり穴が空くような感じ……死にはしないのだけど、重要なモチーフが欠落した状態でも生きていかなければならないという、

─死にはしないけど、少しずつ心の空洞が広がっていくような。

櫻木:月が消滅したことで、自然環境や生態系が崩れたり、僕らの身体や精神にも異変が起きたりするかもしれない。何か大切にしていたものが失われることの象徴として、ここでは月を挙げていますけど、それぞれが大切に思っているものに置き換えてもらえば、僕らがここで言わんとしていることも理解してもらえると思います。いずれにせよ『TENET』は相当インスパイアされましたね。何回も劇場へ観に行きました(笑)。

市川仁也:映像的にも『TENET』のインパクトはデカ過ぎましたね。3人ともそれにかなり引っ張られたままアルバム制作に入っていったので。あとは、さっきおっしゃっていた『インターステラー』からのインスピレーションも大きいです。個人的には相対性理論や量子力学の解説動画などをYouTubeでいろいろ観て、「宇宙ってそんなヤバイことになっていたのか」と思ったのも『インターステラー』の影響だし(笑)。

D.A.N. - The Encounters [feat. Takumi (MIRRROR) / tamanaramen]



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