反ワクチンに人種差別、エリック・クラプトンの思想とどう向き合うべきか?

Illustration by Joan Wong for Rolling Stone. Images in Illustration by Michael Ochs Archives/Getty Images; Steven Puetzer/Getty Images


陰謀論、健康問題、疎外感

クラプトンの回顧録をじっくり読んだことがある人なら、彼の最近の変化はさほど驚くことではないかもしれない。彼は同書の中で「俺にとっては、怒りにまかせて権威に盾突くことは当たり前だった」と綴り、「政治も含め、この手のことすべてにおける陰謀恐怖症」の傾向があることを認めている。

たしかに、クラプトンは鵜呑みにしやすいところがあるようだ。彼は回顧録の中で、80年代に「ヨーロッパ訛りの強いご婦人」から家に電話がかかってきたときの出来事を詳しく語っている。その女性はクラプトンがパティ・ボイド(当時の妻)と上手くいっていないことを知っていると言い、おかしな儀式――「指を切って血を流し、パティと自分の名前を書いた十字架の上にその血をなすりつけ、夜中に奇妙な呪文を唱える」ことをすべて実行するよう彼を説得した(その女性の提案で、彼はニューヨークまで飛んで彼女と一夜を過ごし、ようやくこんな馬鹿げたことをしてもボイドは戻らないことに気付いた)。


"エリック・クラプトン、ワクチン接種に警鐘「二度とギターを弾けなくなると思った」"より(Photo by Gareth Cattermole/Getty Images)

現在のクラプトンの公的見解は、世界的パンデミックやフェイクニュース、自身の健康問題にかき回され、こうした傾向がさらに悪化している。ここ数年メディアでは、クラプトンの最新アルバムよりも健康状態(特に手の状態)のほうが話題になっている。2016年にはローリングストーン誌に持病の「やっかいな神経症で手に影響が出ている」と告白した。翌年には「頭からつま先まで湿疹が出て、手のひらの皮がむけた」と同誌に語っている。さらに末端神経への損傷で、腕や脚に炎症や痛みが走る末端神経障害も抱えていた。

昨年からクラプトンは、イギリス政府のパンデミック対策に疑問を投げかけた、化学エンジニア/作家のアイヴァー・カミンズ氏の動画を見始めた。「黙っていようと思ったんだが、彼のチャンネルを熱心にフォローしている」と、クラプトンは打ち明けた。彼が自分の気持ちを表に出したのは、個人の自由とロックダウンを関連づけたヴァン・モリソンの楽曲「Stand and Deliver」に参加した時が初めてだった。“自由な人間になりたいか/それとも奴隷になりたいか?”という歌詞だ。クラプトンはこのコラボレーションについて、「我々は立ち上がって意思表示をするべきだ。この混乱から抜け出す方法を模索しなくてはならないのだから。代替案など考えるにも値しない」と声明を発表している(奇妙な偶然だが、1976年のクラプトンのバーミンガム公演で、特別ゲストとして出演していたのがモリスンだった)。

自身のコメントに集中非難を浴びるようになると、クラプトンの勢いはさらに加速した。彼は建築家の友人で、同じくワクチン懐疑派であるロビン・モノッティ氏のソーシャルメディア・アカウントを通じてコメントを投稿した。「世界各国政府の弾圧と大手IT企業の検閲に直面した今、オープンな議論と情報の自由のために戦う」と主張するwebサイトOracle Filmsにも、2回目のワクチン接種後に両手が「まったく使い物にならなくなって」症状が悪化した、と語った。「80代、90代と歳をとるにつれて、ますます悪化するかもしれないと思った」と本人。「こいつは……10段階でいえば、3からいきなり8、9ぐらいまで上がった。激痛、慢性的な痛み……免疫系がやられて、また全身が震えた」。クラプトンいわく3週間も両手が動かなかったそうだ。それから彼はこの1年、仲間や家族との間に「疎外感を感じることがある」とOracle Filmsにて発言した

ウェイル・コーネル医科大学で神経学科部長を務めるマシュー・フィンク医師によれば、クラプトンのような神経症の症状を抱える患者に、こうした反応が出るのは当然だそうだ。「ワクチンが普及する限り、我々がワクチン接種後炎症性疾患、または感染後炎症性疾患と呼ぶケースは常に数件出てきます」とフィンク医師は言い、特にアストラゼネカ社のワクチンは神経疾患の稀な症状と関連性があるのだと付け加えた。「手や足に大きな影響が出ることもあります。ですから、ギタリストであればかなり影響をうけたのも納得できます」

とはいえ、クリーム時代のクラプトン作品が大好きだというフィンク医師も、メッセージの内容はもちろん、その発信者についても懸念を抱いている。「こうした理由で、すべてのワクチンにダメ出しするものではありません。現実に、接種した人の大多数にとってワクチンは命を救う治療法なのですから」と彼は言う。「これまでのところ、益のほうが害を上回っています。私ならワクチン接種をやめるべきだなんて絶対に口にしません」。ワクチン懐疑派の存在もあって、現在アメリカの接種完了者は総人口のわずか56%だ。

Translated by Akiko Kato

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