松本隆、シーン復帰後から2000年代までの歩みを辿る



2002年に発売になった、藤井隆さんのアルバム『ロミオ道行』から「代官山エレジー」ですね。実は『ロミオ道行』は連載がなかったら、僕はきっと聴いてなかったと思いますね。これが、いいアルバムなんです。藤井隆さんは1972年生まれ、はっぴいえんどが解散を決めた年の生まれですね。吉本興業のバラエティタレント。藤井隆さんの方から松本さんの詞を歌いたいと熱烈なオファーがあって実現したというアルバムですね。

「魂を抱いてくれ」以降、休憩明けからアルバムが少なくなってます。なぜかと言うと、なかなかアルバム1枚に注ぎ込めるだけの体力的なエネルギーがなくなったという話をしていましたが、その中でも『ロミオ道行』、は原田真二さんからKinKi Kidsに流れて消える、少年性とか青春性とか、そのロマンティシズムみたいなものが結実したアルバムだと思いました。「代官山エレジー」の〈風の木の葉が見つめ合う視線を断ち切る〉とか、〈泣き言をつぶやくな 空模様〉とか、本当にうまいなあと思いましたね。〈泣き言をつぶやくな 空模様〉は空に言っているみたいで、自分の気持ちでもあって。どこか八つ当たりしているようなニュアンスもある。例えば、〈じゃんけんしたのを覚えてる? 勝ったら未来あげるって あせってチョキをだしたから 愛も破けた〉。この男の子の純情。「ジャンケンで勝ったら、私の未来をあげる」って言われたんでしょうね。焦ってしまって、思わずチョキを出した。チョキを出したから、愛が破けてしまったんだ。この因果関係はうまいとしか言いようがない、そんな詞でありました。

Rolling Stone Japan 編集部

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE