古田新太が語る、我が道を進む変わらぬ「生き方」

確かに、「こうあるべき」という理想が高ければ高い人ほど、現実とのギャップに心を引き裂かれてしまうのかも知れない。完璧主義で手を抜くことができないから、相手の至らないところも許せなくなってしまう。結局は自分で自分の首を絞めてしまうことになるのだろう。映画の中で添田は、「娘の何を知っていたの?」と前妻に問い詰められる。古田はどうだろう。「娘のことはちゃんと理解している」と言い切れるのだろうか。

「いや、何にも知らないです(笑)。子育てした覚えもないし、オイラ、娘を風呂に入れたこと1回しかないですから。その時にウンコされて、それから二度と入れてない(笑)。だから添田のこと、とやかくいう資格がオイラにはないんです。そもそも娘がどんな色のマニキュアをつけていたかなんて、世のお父さんが知るわけないと思ってます。ネイル詳しいお父さんもイヤじゃないですか(笑)」

とはいえお茶の間では、娘との仲睦まじいエピソードをよく話している古田。年頃の娘を持つ世のお父さんからすれば羨ましいばかりだが、何か秘訣でもあるのだろうか。

「どうだろう……。ハグだのキスだのしたことないからな(笑)。ただ、娘は反抗期もなかったし『パパ汚い』『あっち行って』みたいなことも言われた試しがない。いまだに一緒に飲んでて、家飲みにも付き合ってくれてます。添田さんのように真面目じゃないから、コケて血が出ていてもそのままテレビを見たりしてるので(笑)。それが日常のようになってるから、娘も奥さんも全然驚かないです」



威厳のある「父親らしさ」とは真逆の振る舞い。かっこ悪い姿を自ら進んでさらけ出しているのに、否、さらけ出しているからこそ、相手も安心して心を開くことができるのかも知れない。「この人になら、自分のかっこ悪いところを見せても大丈夫かも知れないな」と。映画の中で添田が、元妻の松本翔子(田畑)に「あなたは自分のことが、一番許せないんでしょう?」と言われるシーンが印象的だ。もし彼が「ダメな自分」を自ら許し、古田のようにさらけ出すことが出来れば、もっと生きやすい人生が送れたのかも知れない。

「真面目で優秀だからこそ『俺はダメなやつです、ごめんなさい』が出来なかったんでしょうね。(松坂)桃李が演じたスーパーの店長の方こそ、実はそんなに真面目なヤツじゃない。親父のスーパーを何となく継いで、企業努力もせず適当に生きてきたんです。そういう人間たちのぶつかり合いだから、いつまで経っても平行線のままなんだろうな」

そう言って古田はハイライトに火を付けた。「タバコと酒だけは、誰になんと言われようがやめられない」と彼は笑う。

「なぜ吸ってるかって、『美味しいから』としか言いようがない(笑)。ガムを噛んだり飴を舐めたりしている人と大差ないと思いますよ。銘柄は、若い頃からずっとハイライトです。とにかく昔は安かったんですよ。親父はピースを吸っていたから、他のタバコはぜんぶ薄味に思えてしまったのもあるかな。ハイライトは味がしっかりしているし、辛口なのも気に入っています。うちの娘はアメリカンスピリットを吸ってますね」

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