オリヴィア・ロドリゴ×アラニス・モリセット対談 若くしてスターになった二人の共感

まずは「自分のために」曲を書く

オリヴィア:13歳の時に衝撃を受けたのを覚えています。両親と車に乗りながら『Jagged Little Pill』を聴いていた時だった。「Perfect」が流れて、「なにこれ」って思ったんですよね。それから数日後、音楽の先生に「先生もこういう曲が書けますか?」って聞いちゃった。そこから音楽や作曲に対する見方がガラリと変わりましたね。

アラニス:あの曲のテーマは何だったかしら? 完璧主義? それとも意識の流れについて?

オリヴィア:私や友達のみんながずっと切に感じていたことだったと思います。そういうことを、他の人が口にするのはそれまで聞いたことがなかった。普段の生活でも、会話でも、ましてや流行りの曲の中でも。

あなたが歌うようなテーマは、なかなか歌えるものじゃない。あなたにとっては大変ではないかもしれないけど、聴く側にしてみたら……。ロックダウン前にブロードウェイでミュージカル版『Jagged Little Pill』を見に行って、そこで初めて「So Unsexy」を聴いたとき、「こういうことを全部言えちゃうなんて、信じられない」と思ったのを覚えています。自分のすごく弱い部分、胸の奥にある部分。この時あらためて思ったんですよね、「ああ、曲作りって私が想像していたよりもずっとすごいことなんだ」って。

アラニス:あなたがどうやって曲作りをするかわからないけど、私の場合はまず自分のために曲を書くの。部屋に一人きりでね。

オリヴィア:私もいつもそう。

アラニス:それが世間で共有されると、もう私のものではなくなる。私のストーリーであることには変わりないけど、他の人の解釈を聞くと興味をそそられるわね。私の経験と全く同じこともあるし、私の育った環境とはまったく関係ないところもある。聴く人によって、いろんな風に受け止めてもらえるの。

でも、曲作りは文字通り一人きりになって、胸の奥をさらけだすところから始まる。嬉しいことに、みんながあなたと同じようなことを言ってくれるの、「ワオ、なんて勇気があるんだ」って。どの辺がそうなのか不思議なのよね、自分にとっては勇気があるとは思わないから(笑)。ただ、やらなくちゃいけないという感じ。自分がそうしないと――こういう形で自分を表現しないと、あっという間に具合が悪くなるんじゃないか、という気がして。

オリヴィア:おもしろい!


Photographed by Yana Yatsuk for Rolling Stone. Produced by Walaa Elsiddig and Jenny Martin. Morissette: Styled by Sara Paulsen for Art Dept. Hair styled by Marcus Francis for A-Frame Agency. Makeup by Rachel Goodwin for A-Frame Agency. Jacket by Nanushka. Anine Bing T-shirt and Mother pants from Shopbop. Earrings by Andy Lif. Rodrigo: Styled by Chloe + Chenelle for A-Frame Agency. Hair styled by Clayton Hawkins for A-Frame Agency. Makeup by Molly Greenwald for A-Frame Agency. Sweater by AREA. Pants by Marine Serre.


アラニス:あなたはどう? やらなくちゃ、という感じ? 曲を書いたり自分を表現していないとおかしくなりそう、みたいな?

オリヴィア:私は毎日曲を書くようにしています。だから私も一緒ですね、純粋に自分のために書いてる。「誰もが気に入って、共感できるような曲を書こう!」ってピアノの前に腰を下ろしても、上手くいかないと思う。

私もずっと曲を出してきたけど、どれももう私のものじゃない。「わあすごい、このアーティストは私のためにこの曲を書いたんだ、今の状況にぴったり」と思った曲は数えきれないほどあるけれど、でも実際はそうじゃないんですよね。わかります?

アラニス:うん、その通り!(笑)

オリヴィア:100%そう。私がいま経験していることは一から十まで、アーティスト本人も経験済み。でも、ここがアートの素晴らしいところなんだけど、自分の人生の一部分を切り取って、それらの隙間を埋めることができる。相手がそこに投影するものをコントロールしようとすると、魔法は消えてしまう。

アラニス:投影が度を超すこともあるわね。でも、世間の目にさらされている人、とくにアーティストは、間違って社会活動家になっちゃった感じがする。だって、世間は私たちというスクリーンの上になんでもかんでも投影するんだもの。照明を当てて、間違ったことや嫌っていることを投影する。小さいころ――多分7歳だったかな、父が教えてくれたことがあるの。「いいかい、お前に対する世間の受け止め方は3種類ある。みんなから愛されて、やることなすこと何でもOKという状態。みんなから嫌われて、やることなすこと何でもダメな状態。それから全く気にかけてもらえない状態。そのどれかしかないから、がんばれ!」

この言葉がずっと頭に残ってた。結局周りの人々はみんな、自分がある程度分かってもらえている、理解されていると感じたいのよね。私は今ツアー中なんだけど、毎晩ステージの上でいろんなことを目にして、いろんなことを感じられる。あなたがライブパフォーナンスでどう感じるかわからないけれど、撹拌機みたいな感じなの。エネルギーをとらえて、錬金術みたいに体の中から絞り出して、さらに取り除く、みたいな。

オリヴィア:面白い表現!

Translated by Akiko Kato

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