ビートルズ「Let It Be」の心地よいグルーヴ、鳥居真道が徹底考察

「やはりどちらも東芝のレコードです」





ロックンロールのハーフタイム化は革命的なことでした。60年代中頃のR&Bに見られる傾向だと思いますが、一方にダンス・チューンとしてストレートな8ビートやシャッフルのビートがあり、他方にじっくりと歌を聴かせるスローな6/8拍子(いわゆるハチロク)がある、そんな区分けが見受けられます。その傾向はアレサ・フランクリンの60年代後半のアルバムに顕著です。68年の『Lady Soul』でいえば、8ビート系の「Chains Of Fools」や「Come Back Baby」がダンス・チューン、「(You Make Me Feel Like)A Natural Woman」や「Ain’t No Way」が歌ものという区分けになります。



ロックンロールのハーフタイム化は、比較的ゆっくりしたテンポの歌ものにおけるアレンジの新たな可能性を拓いたといえます。この発明によりダンサブルでかつ歌が活きるアレンジが可能になりました。その代表例がザ・バンドの「The Weight」(1968)です。こちらはハーフタイムシャッフルのリズムとなっております。ロビー・ロバートソン本人がいうように、この曲のイントロのギターはカーティス・メイフィールドのプレイに影響されたことは有名な話です。その頃、カーティス・メイフィールドはインプレッションズの一員として活動していました。「The Weight」におけるインプレッションズの影響はギターだけではないように思います。そのグルーヴも同様に強く影響を受けているように感じています。



例えば「People Get Ready」(1965)や「Falling In Love With You」(1966)、「Love’s A Comin’」(1967)、「It’s All Over」(1967)といった曲は、ドラムのビートこそハーフタイムシャッフルではないものの、グルーヴの基盤となるグリッドレベルにおいてはマイルドなハーフタイムシャッフルになっています。



「The Weight」が収められたアルバム『Music From Big Pink』には「Tears Of Rage」や「In A Station」、「I Shall Be Released」などハーフタイムシャッフルに類する曲がたくさんあります。このアルバムを特徴づけるリズムといっても過言ではないでしょう。ちなみに「I Shall Be Released」はニーナ・シモンもカバーしていますが、こちらはハチロクのリズムにアダプトされています。またザ・バンドはサム・クックの名曲「A Change Is Gonna Come」を1973年にカバーしています。原曲はハネたハチロクのリズムですが、ザ・バンドはハーフタイムシャッフルにアダプトしています。ハチロクとハーフタイムシャッフルは互いに乗り入れが可能という関係にあるかもしれません。

『Music From Big Pink』は影響力をもったアルバムでした。エリック・クラプトンにクリームを止める決意をさせたアルバムとも言われています。もちろんビートルズのメンバーにも影響を与えており、ジョージ・ハリスンはいたく感銘を受けて、レコードを知人に配るほどの熱の入れようだったようです。リンゴ・スターはのちに『Last Waltz』にかけつけています。ポール・マッカートニーは、「Hey Jude」のプロモーション・フィルムに収められたライブにおいて、曲の終盤で「The Weight」の一節を引用しています。



「Hey Jude」もまた、若干ではありますがマイルドなハーフタイムシャッフルの感覚を湛えたグルーヴの曲です。ただし16分音符レベルでのグリッドがぼんやりしており、ハネてもハネなくても良いどっちつかずな雰囲気があります。途中で挿入されるタンバリンの刻みも中途半端です。「Hey Jude」は北のシュプリームス、南のウィルソン・ピケットによってそれぞれカバーされていますが、前者はイーブン寄りのグルーヴ、後者はシャッフル寄りのグルーヴとなっており、この対比に、原曲のどっちつかずなグルーヴの特性が現れているように思います。

Rolling Stone Japan 編集部

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