The fin.が語る 30歳の今、やりたいことをピュアにやり続けられる理由

The fin.:左からKaoru Nakazawa(Ba)、Yuto Uchino(Vo,Gu,Synth)(Photo by Yoshiaki Miura)



『Outer Ego』の意味

─アルバムタイトルとなっている『Outer Ego』には、どんな由来がありますか?

Yuto:制作を始めた当初は、「Outer Space」や「Outer Rim」なんてワードを使っていました。要するに、宇宙が広がっていて、そのさらに外側に存在する世界をイメージしていたんです。でも、アルバムを作りながら自分の内側へと深く潜っていくうちに、そのエゴが集まってギュッと凝縮されていくような感覚があって。そんなふうに自分のエゴから離れられない人生は嫌だなと。もっと外へ向かっていって、徐々にエゴが薄まっていくようにしたかったんです。そういう意味で、「エゴの外側」という意味を持つタイトル『Outer Ego』にしました。なのでこの曲は、「自己を超えよう」という自分自身へのメッセージともいえるかもしれないですね。

─歌詞はどのように書いていきましたか?

Yuto:今回は二つのテーマを使って歌詞を書くことが多かったですね。例えば「Deepest Ocean」は、「地上の世界」と「海底の世界」を扱っているし、「Old Canvas」は、「今の自分」と「過去の自分」が対話をしている。「At Last」は、自分のインナーチャイルドと対話している中で生まれたストーリーです。

例えば自分自身のエゴを自分の内側から見た時と、外から見た時って形が違って見えるはずじゃないですか。自分の外側にある世界も、見る場所によって違って見えるはず。そうやって二つの視点を対比しながら曲を作ることによって、「自分」というものが浮き彫りになってくるんじゃないかと。実際にやってみたら、思っていた以上にうまくいきました(笑)。





─ところでYutoさんの歌詞には「潜る」「海」「湖」「水の底」といった表現がたくさん出てきますよね。

Yuto:そうなんです。小さい頃からずっと、「水」が自分にとって重要なモチーフになっていて。物事を考えたり想像したりしたとき絶対に「水」があるんですよね。自己の内面に深く潜っていくということを、海や湖に潜っていくことに喩えやすいというか。実際にダイビングなどはしたことないけど、実家が神戸の山手にあってベランダから海が見えるんです。もしかしたら、その風景がずっと記憶に残っているのかもしれないですね。

─自己の内面へと深く潜っていくことは、ある意味では生と死の境界線に近づくことだとも思うのですが、そういう意味でThe fin.の歌詞はYutoさん自身の死生観ともリンクしていますか?

Yuto:そう思います。実をいうと「Loss, Farewell」と「See You Again」は、友人と祖父の死がテーマになっていて。プライベートなことなのであまり詳しくは話せないのですが、おっしゃるように「死生観」は自分にとってとても大事なテーマです。「Loss, Farewell」では、自分の中でまだ「死」を受け入れることができていないんですけど、「See You Again」で受け入れられるフェーズへと進んでいく。それは単純に、そういうプロセスを辿ることが自分にとって必要なことだったなと振り返ってみて思います。

─ある意味、作詞という行為が自身のセラピーにもつながっているというか。

Yuto:そうですね。自分の内側に溜め込んでいたものを、アウトプットすることによって乗り越えていくようなところはありました。ただ、タイトル曲「Outer Ego」は、自分よりも若い人に向けて書いた曲でもあります。例えばビリー・アイリッシュなどを見ていて思うのは、最近の若い子たちはすごく生きづらそうだなということなんですよ。でも、それって要するに俺たち上の世代が築いたシステムによって苦しんでいるわけじゃないですか。自分よりも下の世代に、少しでもいいものを残さなければという気持ちが最近はすごく強くて、そういった意味でも何か生きるためのヒントになったらいいなという気持ちはありました。

今年で僕は30歳になるんです。上京したばかりの20代前半は自分のことばかり考えていたのですが、30歳になった今は音楽でやれることも増えてきたし、例えばプロデュースで誰かの曲に参加して、自分のスキルを提供して人の音楽に貢献するとか、そういう喜びも自分の中で芽生えたり、「FRIENDSHIP.」のキュレーターとして新人アーティストを発掘したり、だんだん自分の視野が広がっていくとともに、よりThe fin.が自分にとってスペシャルな存在になっていくところもあって。自分の下の世代について、考え始めるようになっていったんですよね。


Yuto Uchino(Photo by Yoshiaki Miura)

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