The fin.が語る 30歳の今、やりたいことをピュアにやり続けられる理由

もう一度「メロディの力」みたいなものにフォーカスしたいと思った

─それは単に利他的な気持ちだけでなく、自分自身のためでもありますか?

Yuto:ありますね。結局、世界もでっかいコミュニティじゃないですか。それをどういう方向へ持って行くか考えることが、僕ら全員にとっての大きな課題やと思うんですよ。ラッキーなことに、こうやって音楽で生活できていて、人に影響を与える立場にいるのだから、ちょっとでもいいものを残せたらいいなとは思いますね。そのためにも自分のエゴにがんじがらめになって歳を取っていくのではなく、もっと視野を外に広げていきたいし、その先に明るい未来があるんじゃないかなという「希望」を歌いたかったんです。

─ところで、本作を作っていたときによく聴いていた音楽、影響を受けた作品というと?

Yuto:歌詞は全てプライベートなものなので、何かの作品に影響を受けるとかはなかったと思います。自分の人生こそがインスピレーションの元といいますか。あ、でも制作に取り掛かり始めたときには「ビートルズの『ホワイト・アルバム』みたいなアルバムが作りたいな」と思っていました。『ホワイト・アルバム』のように様々な要素が入った「なんでもあり」の作品。結局はそうならなかったけど(笑)、『Abbey Road』の後半のメドレーみたいなものは、どこかで意識していましたね。

─Yutoさんの中で、ビートルズの存在ってかなり大きいのですね。

Yuto:めちゃくちゃデカいです。中学生の頃から聴き始めたのですが、本当にあらゆることを教えてくれた存在ですね。ソングライティングという面でも、ヴォーカルという面でもそう。大学生の頃とか、アコギ片手にビートルズの曲ばっかり歌っていましたし。あと、自分でレコーディングやミックスをするようになってから、改めてビートルズの凄さを再認識しました。ビートルズのプロダクションって知れば知るほど「ほんまにすごかったんやな」って。そこで学び直したところはあります。60年代って、ものすごくクリエイティブな時代じゃないですか。そこへの憧れもすごく大きいですね。

それから最近のヒップホップ、例えばタイラー・ザ・クリエーターやフランク・オーシャンのアルバムを聴くと、曲と曲とが繋がっていたり、曲間が全然なかったりして、そういうところにも影響を受けていると思います。ただ、ここ数年ずっと聴いてきたラップミュージックにも少し飽きてきて。もう一度「メロディの力」みたいなものにフォーカスしたいとも思ったんですよ。やってみて、やはり自分はメロディが好きやなと改めて思いました。

─The fin.の音楽は、ドリームポップやチルウェイヴ、シューゲイザーなどを引き合いに出されることも多いと思います。そうしたサウンドは「エスケーピズム(現実逃避)」にも直結しがちですが、Yutoさんは音楽と政治、社会問題の関係性についてどう感じていますか?

Yuto:リスナーとしての自分自身は、音楽で完全にエスケープすることはできないですし、しようとも思っていなくて。やはり社会と関わっていたいし、そもそも俺の歌詞って、社会と強く結びついているんです。ファイトしていたり、ストラグルしていたりする面が強く出ている曲もあるし。中にはエスケイピズム的な曲もあるし、そういうタイプの楽曲も個人的すごく好きなのでよく聴くんですけどね。

─そろそろお時間なので最後の質問です。これは以前から個人的にお聞きしたかったことなのですが、Yutoさんは好きな音楽を自由に作りながら、その上でちゃんと音楽だけで生活できているのはなぜだとご自身では思っていますか?

Yuto:俺もそれ、考えていたんですよ。最初に上京したのは23歳くらいで、当時は食いつなぐのに必死だから、「音楽で食べていくためにはもっと稼がなければ、売れなければ」みたいなことを考えながら活動していたんです。でも、それだとどこかでブレてくるんですよね。そこのセルフコントロールが難しかった。ブレないために大切なのは、自分は何が欲しいのかをちゃんと見極めることじゃないですかね。結局のところ、それが分かってないと幸せにもなれないと思う。

─自分が欲しいものを見極めることが「幸せ」につながる。本当にその通りだと思います。

Yuto:あとは、いいマネージャー、スタッフを見つけることかな(笑)。やっぱり一人でやっていると、自分を見失いかける時もあって。そういうときに修正してくれる人が身近にいるかどうかはとても重要です。もし、自分が今のチームと巡り合っていなかったら、絶対に続いていなかったと思いますし。そういう意味では、自分は本当にラッキーでしたね。昔からずっとそうなんですよ。親にも「あんたはいっつもいい人に恵まれているね」って言われていました(笑)。やっぱり最終的には「人」ですよね。いい人と出会って、いい人と仕事をしていくこと。そうやって活動を示していくことも大事です。自分がやる仕事、一つひとつの選択をみんなが見ているわけじゃないですか。その選択一つひとつが自分と人とを結びつけてくれているわけですから。

─であれば、なおさら自分がやりたいことをやるようにしないとですね。

Yuto:本当にそう思います。そこで嘘をついちゃうと、そこから繋がっていって抜け出せなくなる。もしかしたら、そこに一番気を遣っているかもしれないな。とにかく、やりたいことをピュアにやり続ける。The fin.は、まさにそういう場所です。本当に自分のやりたいことだけをやれる、そんな場所を作っておくことが何より大事だと思いますね。


Photo by Yoshiaki Miura

<INFORMATION>


3rd Full Album
『Outer Ego』
The fin.
HIP LAND MUSIC
【DIGITAL・CD】11月24日発売
【LP】11月27日発売
CD ¥2,750 (税込) | RDCA -1068
LP ¥3,850 (税込) | RDCA -1069

01. Shine
02. Over the Hill
03. Short Paradise
04. Deepest Ocean
05. Old Canvas
06. At Last
07. Loss,Farewell
08. See You Again
09. Outer Ego
10. Sapphire
11. Safe Place
12. Edge of a Dream


【"Outer Ego” Release Tour】
2022年2月11日(金・祝)大阪・梅田Shangri-La
OPEN 17:30 START 18:00
ADV ¥4,000(Drink代別)

2022年2月18日(金)東京・恵比寿LIQUIDROOM
OPEN 18:00 START 19:00
ADV ¥4,000(Drink代別)

チケットオフィシャル先行受付
期間: 11月24日(水)12:00〜12月7日(火)23:59
受付URL: https://www.thefin.jp/


【"Outer Ego” Release Special Online Live】
2021年12月3日(金)at 渋谷FS.
START 20:00 (アーカイブ期間: 2021.12.31まで)
Outer EgoのCD、LPを全国のCD SHOP、オンラインショップで購入の方に先着特典として、配信URL付きステッカーを配布しています。数に限りがありますので各CD SHOP、オンラインストアへお問い合わせ下さい。

Official HP
http://thefin.jp

Yuto Uchino ポッドキャスト
https://FRIENDSHIP.lnk.to/ongakutoseikatsu

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