The fin.が語る 30歳の今、やりたいことをピュアにやり続けられる理由

The fin.:左からKaoru Nakazawa(Ba)、Yuto Uchino(Vo,Gu,Synth)(Photo by Yoshiaki Miura)

Yuto Uchino(Vo, Gu, Synth)とKaoru Nakazawa (Ba)の二人組ユニット、The fin.による3rdアルバム『Outer Ego』がリリースされた。フルアルバムとしては、前作『There』からおよそ3年半ぶりとなる本作は、新型コロナウイルスによるパンデミックが世界的に広がる中、東京にプライベートスタジオを新設したYutoがすべての歌と楽器演奏、プロデュース、録音そしてミックスまでほぼ一人で手がけた意欲作。

自己の内面に深く潜りつつ「外の世界」と行き来しながら作り上げたサウンドスケープと歌詞世界は、これまで以上に内省的かつドリーミーな仕上がりだ。奇しくもロックダウン寸前のロンドンを離れ、日本に戻ってきたYutoは、二つの国の状況をどのように眺めていたのだろうか。また、バンド結成から10年が経った今もなお、活動のあり方を自由に選択し続けていられるのは何故か。本人にじっくりと話を訊いた。



─The fin.は2016年9月より拠点をロンドンに移していましたが、昨年2月からの新型コロナウイルス感染拡大は活動にどんな影響を与えましたか?

Yuto:実を言うと、2019年の11月に帰国していたんです。2018年にリリースした2ndアルバム『There』はロンドンで作ったのですが、その翌年のEP『Wash Away』はロンドンと日本を行き来しながらの制作だったので、「次は自分のスタジオを作って腰を据えて制作をしたいな」と。それで東京にプライベートスタジオを新設し、制作を始めようと思っていた矢先にコロナが始まった。そういう意味では、本当に運が良かったのかなと思っています。

─そうだったのですね。実際の制作はいつぐらいから始めたのですか?

Yuto:最初はアルバムではなく、『Wash Away』に続くEPを作るつもりだったんです。でもコロナになって、例えばSXSWなど出演予定だったフェスやライブが全て飛んでしまい、久しぶりにゆっくりした時間が過ごせたんですよね。それまではロンドンと日本を頻繁に行き来したり、いろんな国のフェスに出演したり、本当に移動ばかりの日々だったのですが。それでしばらく自宅でのんびりしているうちに、自然と「アルバムを作ろうかな」と思うようになっていきました。なので最初のうちは、そこまで切羽詰まった状況ではなかったんです。

─とはいえ、ここまでコロナが長引くとは思っていなかったわけじゃないですか。この1年以上の間、制作のモチベーションは変わらず保っていられましたか?

Yuto:今言ったように、最初こそ「制作に集中できるぞ!」と喜んでいたのですが、世の中の状況はどんどんシリアスになっていきましたよね。「自分は一体何をしているんだろう」「アルバムを作ったところでツアーにも出られないし」「やっている意味あるのかな」みたいな気持ちになったことも、もちろんありました。

その代わり、いろんなことがシンプルになった気はしていて。1年中スーツケースを引いて移動していたときは、入ってくる情報も多いしそれに振り回されたり疲弊してしまったりすることも多かったのですが、ひたすら自分と向き合う時間ができたことで、余計な情報が削ぎ落とされていく感覚があって。「これから一体どうなってくるんだろう?」みたいな、漠然とした不安みたいなものもありましたが、それって多かれ少なかれみんな同じだったとも思うんですよね。

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