岡村靖幸の名盤『家庭教師』、当時のプロモーターが背景を語る



田家:『家庭教師』の2曲目「カルアミルク」が流れていますが、この曲で思い出すことは?

福田:『家庭教師』って、実はそれまでのアルバムの中で描かれている青春の主人公みたいなのがいて。それとはまた、彼がもうちょっと歳を重ねるというか。少し大人になった主人公が『家庭教師』には散りばめられていた。「カルアミルク」も主人公が大人になって、六本木というキーワードがあったり、お酒というキーワードがあったり、ディスコというキーワードがあったりして。ちょっと大人になって味わう恋愛ストーリーみたいな内容なんですね。それと別に、1つだけ僕自身の個人的なエピソードがあるんです。『家庭教師』のプロモーションで全国を彼と回ったとき、秋田のFM番組公開録音がありまして、その時にカラオケ選手権というコーナーがあったんです。そこに僕が飛び入りしてこの曲をオリジナルカラオケでワンコーラス歌わせていただいて、それが電波に乗った(笑)。結構自慢です。

田家:(笑)。実は9月29日にBank Bandのアルバム『沿志奏逢4』というベスト盤が出まして。Bank Bandというのは音楽プロデューサーの小林武史さんとミスチルの桜井和寿さんが組んでいる、ap bank fesのためのバンドなのですが。このBank Bandの1枚目のアルバム『沿志奏逢』に「カルアミルク」が入ってまして、『沿志奏逢4』にも収録されていました。

福田:おーそうですか。ありがたいですね。

田家:仕事場に当時の雑誌がないか探していたら、月刊KADOKAWAの1996年5月号が出てきたんです。その中で桜井和寿さんがこのアルバムを僕の愛するアルバムと言っていて、岡村靖幸パート2になりたいって書いてありましたよ(笑)。

福田:そうですか(笑)。

田家:EPICの中で『家庭教師』の評価はどういうものだったんですか?

福田:ずば抜けて高かったと思います。このCDのサンプルをくれっていう方が、スタッフだけじゃなくてアーティストに結構多くて。鈴木雅之さんにもお渡しをして、その後にテレビの仕事でお会いした時に「『家庭教師』すげーな」って大絶賛されていて。きっとまあ、いろいろなアーティストが、このアルバムをすごく評価してくださっていたんだろうなと。

田家:そういう意味では代表曲の1つになりました。「カルアミルク」って飲み物自体、この歌で知った人多いでしょうね(笑)。岡村さんがどんな青春像を歌っていたのかは来週以降のお話になると思うんですけど、あらためて聴き直してみて、とてもジャーナルなシンガーソングライターだったんだなって感じがしたんですよ。この歌詞の中のファミコンとかディスコとか、レンタルビデオとか、当時新しく言われていた小道具みたいなものをたくさん歌われていたりもして。

福田:そうですね。オープニングでかけた「どぉなっちゃってんだよ」にもセクハラっていう言葉が出て、セクハラ上司。セクハラってあの頃は、そんなにポピュラーじゃなかったのかなって思いながら、そういう当時の社会的なキーワードをところどころ盛り込んでくる。それが詞の中で変に浮かない。ビジュアル的にも上手く僕らに伝わってくる。それも岡村くんの才能なのかなって気がしますね。

田家:「どぉなっちゃってんだよ」の中には〈無難なロックじゃ意味がない〉っていうのがあったので、この話を後ほど伺おうと思っています。

Rolling Stone Japan 編集部

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