岡村靖幸の名盤『家庭教師』、当時のプロモーターが背景を語る



田家:艶めかしくどこか妖しげな「家庭教師」から、青春そのもののような5曲目「あの娘ぼくがロングシュートを決めたらどんな顔するだろう」。

福田:今考えるとというか、アナログにしてみるとこれがB面の1曲目になるんですね。だから、全くアナログのことを想定して作ってなかったにしてはすごくアナログチックな曲順になってるなと、今になって思ったりしますね。

田家:そういう意味ではこれが初めてB面の1曲目として今回発売されるわけですもんね。

福田:そうです。外周と内周の並びみたいなものをよく考えていたような気がするんですけど、LP時代って。上手くその流れになっているのかなって、5曲目っていうのは。

田家:「どぉなっちゃってんだよ」、「カルアミルク」、「(E)na」、「家庭教師」。この4曲それぞれタイプの違う曲でA面が終わって、B面はまた青春に戻るみたいな。

福田:そうです。最後バラードの「ペンション」終わるみたいな構成だとすると、すごくアナログ盤っぽいですよね。

田家:しかも今回のアナログ盤のアートワークはすごいですね。

福田:びっくりしていただけると、これ幸いです(笑)。

田家:CDもオリエンタルでサイケデリックなアートではあるのですが、真ん中に少年の顔があるのですが今回は少年の顔がない。

福田:その代わり、穴の向こう側、レーベルのところにミラーシールが貼ってあって、手にするとご自分の顔がジャケットの中に入る、ご自分がジャケットの一部になるという、ある種未来型というか、それこそ21世紀型のジャケットという趣向なんですね。これはクリエイティブプロデューサー、今岡村くんのプロデューサーをやられている近藤さんのアイディアで。


アナログ盤『家庭教師』ジャケット写真

田家:オリジナルのCDの少年は岡村少年なのかもしれませんが、今回のアナログ盤の少年は“元少年”の君ですよ、あなたですよという(笑)。

福田:そうです(笑)。

田家:そういうアルバムになったんですね(笑)。で、この「あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう」、当時お聴きになった時はどう思われましたか?

福田:これは聴いた瞬間から、31年経った今でも、大げさに言うと、僕の人生、僕の歴史の中でこの曲はナンバーワン。すごい出来がいいと思います。

田家:ナンバーワンの理由はどんなものでしょう。

福田:まずアコギとハンドクラップから始まって、音の展開がどんどん重なっていくストーリーになっていて。そこに上手く繋がる歌詞があるんですけど、そのハマり方がやっぱり絶妙で。音とメロディと詞が一体化しているポップソングというのは、僕の中ではこれがやっぱり1番。他の曲もいっぱいあるんですけど、1番ですね。詞と音とアレンジと、ストーリーみたいなものがちゃんとあるような気がして、そこの深さみたいな、単純なポップソングじゃないっていうところに感動して。何万曲あるポップソングの中で、今でも僕はこの曲が1番好きです。

田家:たしかに理詰めな感じはしますね。ちゃんと設計図があるような感じが。

福田:ちなみに長いタイトルがありますよね。これ、つい最近僕知ったんですけど、どうやら当時のプロデューサーの小坂洋二さん発案だった。

田家:槇原敬之さんのデビューアルバムとこれが、長いタイトルの最初でしょうからね。

福田:そうですね。

Rolling Stone Japan 編集部

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