岡村靖幸の名盤『家庭教師』、当時のプロモーターが背景を語る

田家:特にアルバムのB面なんですけども、この曲は岡村さんの憂国のソウルブルースなんじゃないかと思ったんですよ。

福田:いやーその通りですね。

田家:アルバムの最後の「ペンション」という曲も、どこか悲しいですもんね。

福田:成長した青春の主人公の最後の曲なんですよね。それなりの主人公の成長の証しを切り取ったような、ハッピーではないかもしれないけどという予感。そこを終末というか、最終曲としつつ、これは勝手な想像ですけど、この続編というか。次のアルバムは、実際には『禁じられた生きがい』にはなるんですけど。

田家:空きましたもんね、5年間。

福田:もしかすると続編というか、そういう構想が彼の中でちょっとあったのかなって、今お話を聞いていて思ったりしましたね。

田家:アナログ盤だとA面とB面のトーンが随分違うなというのがよく分かりますもんね。

福田:そうです、そうです。

田家:あらためて2021年『家庭教師』でどんなふうにこのアルバムを聴かれたらいいとか、ここに何を学んでほしいとか、岡村靖幸さんというアーティストをどういうふうに見てほしいというのはありますか。

福田:僕個人はそういう思いはないです。ストレートにこのアルバムを手にしてもらって、ジャケットをちょっと楽しんでもらって。で、アナログなので、アナログプレイヤーで聴いていただいて、音の雰囲気を楽しんでいただいて、中にちょっとお楽しみなものが入っているのでそれを普通に見てもらって。今の感性でその方々がどう捉えるかだけのことだと思うので、僕から聴いてください、こうですよっていうのを主張するのは、聴かれる方に対してちょっと失礼だと思うので。そういうのはないですね。

田家:でも、当時のCDとは違う聴かれ方をされるだろうなというのは想像つきますもんね。

福田:おそらくそうだと思います。

田家:来週以降、あらためて1枚目から辿ってみようと思っているのですが、岡村靖幸さんは福田さんの中ではどんなアーティストですか?

福田:僕の中ではすごく距離の近いアーティストなんですけど、本質的には1番距離の遠い人だと思いますね。スポークスマンとしてちゃんとできているかと言えば、絶対そうじゃないとも思うので。ただ、音楽的なことも一リスナーとして捉えると、僕にとってはすごく近いというか、身近なすごくポップソングを作ってくれるアーティストとして身近ですし、いろいろな話もさせてもらったので距離は近いんですけど。本質的なところでいくと、やっぱりすごく遠いというか。

田家:来週以降、初期のプロモーター・西岡明芳さんとお2人で登場していただこうと思います。来週もよろしくお願いします。

福田:はい、よろしくお願いいたします! ありがとうございます!


左から、田家秀樹、福田良昭

Rolling Stone Japan 編集部

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