コートニー・バーネットが見つけた美しい感情 「非日常」がもたらした新境地を語る

コートニー・バーネット(Photo by Ian Laidlaw)

オーストラリア発のシンガーソングライター、コートニー・バーネットが通算3作目のニューアルバム『Things Take Time, Take Time』を発表。収録曲に宿る「痛みや悲しみに似た何かから生まれた、喜びや感謝に似た感情」を、彼女はどのように見つけ出したのか?

2020年初頭、コートニー・バーネットは丸1年間制約なしに曲作りに没頭することを楽しみにしていたが、1つだけ条件を自分に課していた。「曲にするだけの価値がある何かを実際に経験する。それを忘れないこと」。同年1月に行われた本誌インタビューで、彼女はそう語っている。「家に引きこもったまま、アルバムを完成させるためだけに淡々と曲を書くんじゃなくてね」

筆者がその発言について触れると、彼女は笑った。「ウケるよね」。メルボルンの自宅で電話取材に応じてくれた、現在33歳のオーストラリア出身のシンガーソングライターはそう言った。「すごく皮肉に聞こえる。私が望む望まないに関係なく、世界全体がそれを押し付けられたわけだから。多分、今までで一番時間を持て余した1年だったと思う」



2020年の大半を、家に引きこもったまま曲作りに費やした結果生まれたアルバム『Things Take Time, Take Time』は、11月12日にMom + PopとMarathon Artistsからリリースされる。過去10年間で最も愛されたインディーアクトの1人である彼女の、日常の些細な出来事をユニークな視点で描くソングライティングに魅了されたファンは、今作に期待を裏切られることはないはずだ。一方で、ここには新鮮味もある。アルバムに収録された10曲は、過去2作に見られたクランチーなロックバンドらしいサウンドをほぼ脱ぎ捨て、ベッドルームでひたすら自身と向き合う日々から生まれた、ラディカルなまでの親密さを宿している。誠実さを惜しみなく世界と共有してきた彼女による、これまでで最もパーソナルなアルバムと言えるだろう。

コートニーは『Things Take Time, Take Time』について、「痛みや悲しみに似た何かから生まれた、喜びや感謝に似た感情」を描いた、長い夜の後に訪れる朝の光のようなアルバムだと説明する。同作のハイライトというべき、煌びやかな金属音が印象的な「Write a List of Things to Look Forward To」を聴けば、彼女の言わんとすることが理解できるはずだ。

Translated by Masaaki Yoshida

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