コートニー・バーネットが見つけた美しい感情 「非日常」がもたらした新境地を語る

コートニー・バーネット(Photo by Ian Laidlaw)


森林火災とロックダウンの影響

彼女は2018年作のエモーショナルな2ndアルバム『Tell Me How You Really Feel』の発表直後に曲を書き始めたが、しばらくしてその大半をボツにした。前述の「Write a List of 〜」は、そのセッションから生まれた数少ない曲の1つだ。同曲が完成したのは、オーストラリアで猛威を振るっていた森林火災など、彼女が大きな精神的ストレスを抱えていた2019年末のことだった。

「とにかく気が滅入ってた」。当時のことを彼女はそう振り返る。「ずっと落ち込んでて、友達も私のことを心配してた。『何か楽しみにしていることを書き出してみたら?』てみんなから言われたんだけど、当時の私はこう答えるしかなかった。『そんなのない。1つも思い浮かばない』」

友達から何度も促され、コートニーはやっとの思いで「25ヴァース分くらい」の数をリストアップした。その一部は、新作に収録されたこの2分強のミニアンセムで使われている。アップビートなコード進行に合わせて、彼女は“隣に座って、世界が燃えるのを一緒に見よう”と歌う。「あの曲は気に入ってる、楽しい気分になれるから」。コートニーはそう話す。「すごく天気のいい日にドライブしてるような感じ。私はそういう、相性のいいもの同士を並べるのが好きなの」



2020年初頭に、森林火災の被害に対する支援金を募るイベントにいくつか参加した後、彼女はアメリカで短いソロツアーを行い、バレンタインデーにはロサンゼルスでチャリティーコンサートを開催した。メルボルンに戻った頃には、新型コロナの蔓延を理由に、彼女は自主隔離しなくてはならなかった。1人で過ごせるスペースを持っていなかった彼女は、使われていない友人のアパートに転がり込んだ。「結局そこで丸1年暮らした」。彼女はそう話す。「小さいけどすごく素敵なフラットで、大きな窓から太陽の光がたっぷりと差し込んでくる。あそこを使わせてもらえたのは本当に幸運だった」

ロックダウンという非日常に慣れ始めると、コートニーは料理について学び、Criterion Channel(クラシック映画を中心としたストリーミングサービス)に加入してアニエス・ヴァルダやアンドレイ・タルコフスキーの映画にのめり込み、以前から興味があった本を手に取り、時には水彩画を描いた。「壮大な計画をたくさん抱えてたの」。彼女は笑ってそう話す。しかし実際には、彼女は窓のそばに座り、コーヒーを飲みながらアコースティックギターを弾くことに時間の大半を費やしていた。

アルバム中最もスウィートな曲の1つである「Turning Green」における、陰鬱な日々の先に見え始めた希望を感じさせる歌詞(“木々が緑の葉をつけ始めた 春の日々にやる気のない背中を押されて 雑草に紛れて咲く花を探す”)からは、当時の彼女の日常を垣間見ることができる。「窓のすぐ外にある大きな木を見ていると、季節の移ろいが感じられた」。コートニーはそう話す。「比喩的な意味もある。あの曲にはすごくポジティブなところがあると思う。何かが自分の中で変化して、トンネルの向こう側に辿り着いたような感じ」

アルバムからの1stシングル「Rae Street」のテーマは古い記憶に根ざしている。「ある日、両親がよく口にしてた言葉を書き出すことにした」。彼女はそう話す。サビの“時は金なり でも金は誰の友人でもない”という謎めいたフレーズは、彼女の父親がよく口にしていた格言を、彼女が自分の価値観にもとづいてアレンジしたものだ。

Translated by Masaaki Yoshida

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