コートニー・バーネットが見つけた美しい感情 「非日常」がもたらした新境地を語る

コートニー・バーネット(Photo by Ian Laidlaw)


ドラムマシンが導いた新境地

デモを何曲かレコーディングしようとしていた時、彼女はシカゴにあるウィルコの機材だらけのロフトを尋ねた際に譲ってもらった、ヴィンテージのドラムマシンRoland CR-8000を使ってみることにした。「アナログだから少し天邪鬼なところがあるの」。そう話すコートニーは「小さくてキュートなドラムマシンに夢中」だという。

彼女はその使い方について学んだことはなかったが(「いつも適当にビート組んでみるだけだった」)、当時は時間を持て余していた。彼女は友人のステラ・モズガワ(ウォーペイントのドラマー、コートニーとカート・ヴァイルの共作『Lotta Sea Lice』でもドラムを叩いている)に電話をかけ、その使い方について教えてもらったという。2人はドラムマシンの斬新な使い方を編み出したアーティストたちのプレイリストを作って交換するようになり、そこにはアーサー・ラッセルやヨ・ラ・テンゴが含まれていた。「ワクワクしたし、エキサイティングだった」。コートニーはそう話す。「あのドラムマシンの機械的なビートを聴いていると、なぜかすごくリラックスできた」。ステラが「制作において理想的なパートナー」であることを確信したコートニーは、彼女を次作の共同プロデューサーに迎えることにした。

2020年12月、彼女とステラはシドニーのGolden Retriever Studiosで合流し、レコーディングを開始した。いつもならこの段階に達すると、彼女はドラムマシンを棚にしまいこみ、バックバンドのメンバーをスタジオに呼び寄せていた。「ドラムマシンを使うのはあくまでデモで、スタジオでは生ドラムに置き換えるようにしてた」。彼女はそう話す。「それは絶対に譲れなかった」

しかし今回、彼女は自宅で作ったデモの親密さを残そうとした。収録曲の多くには、ステラが様々なドラムマシンで組んだローファイなビートが使われている。ヴォーカルとギターはコートニーが、生ドラムはステラが担当し、ベースやその他は両者で分担した。「ほとんど2人だけで作ったんだ」。コートニーはそう話す。「全部が同時に起きているようで、すごくリアルに感じられた」

ベースとドラムマシンだけで生み出される躍動するグルーブと、冒頭から2分の時点で突如放たれる強烈なギターソロが印象的な「Turning Green」は、長いプロセスを経て最終バージョンに至った。「あのメロディは思いついた瞬間からすごく気に入ってたけど、スタジオでステラに聴かせた時は違和感を覚えた」。コートニーはそう話す。「自分の他の曲の一部のように聴こえたの。それでステラが、『曲を一旦バラバラにしてみたら?』って提案してくれて。結果にはすごく満足してる。本当の気持ちを歌詞にできたっていう気がする、表面的なものじゃなくてね」

他の曲群が生まれる過程はそれぞれ違った。アルバムのセンターピースの1つである、ゴージャスで浮遊感のあるバラード「Here’s the Thing」(“高いところは怖くない 落ちるのが怖いだけなのかも”)は、自宅でテレビを見ながら適当にギターを弾いていた時にアイデアが生まれたという。ヴォーカルをレコーディングしたのは、北部のニュー・サウス・ウェールズの郊外を訪れた時のことだ。「途方もなく大きな山のすぐ近くに泊まってたの」。彼女はそう振り返る。「ものすごく美しいところだった。だからヴォーカルにも特別なものが宿ったんだと思う」


Photo by Mia Mala McDonald

7月に行われたニュージーランドの数カ所を回るソロツアーを経て、彼女は2020年初頭以来となるツアーに出る。アルバムがリリースされる11月に始まる、バックバンドを従えた北米ツアーは来年2月まで続く予定だ。久々のツアーに興奮しているという彼女は、その過程で曲がどう変化していくのか楽しみだと話す。「バンドとのライブを重ねるうちに、これらの曲の別バージョンが生まれていくはず」。彼女はそう話す。「演奏すればするほど形が変わっていくの。いつもそうだから」

新しいアルバムがファンの元に届くのが待ち遠しい、彼女はそう話す。「去年、私は特筆すべきことを何ひとつ経験しなかった」。彼女はそう続けた。「でも同時に、すごくいろんなことを経験してたと思う。『Turning Green』に出てくる“雑草に紛れて咲く花”っていうフレーズは、思いがけないところに美しいものを見つけることの喩えなの。それを決して忘れないよう、今も自分に言い聞かせてる」

From Rolling Stone US.




コートニー・バーネット
『Things Take Time, Take Time』
2021年11月12日発売
解説・歌詞対訳、ボーナストラック収録

通常盤:2,400円(税抜)
詳細:https://trafficjpn.com/releases/things-take-time-take-time/


Tシャツ付限定盤:5,450円(税抜)
サイズ:S〜XL
詳細:https://trafficjpn.com/releases/cb-t/

Translated by Masaaki Yoshida

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