ペンタトニックスが語るクリスマスへの特別な思い、アカペラ・グループとしての成長

「実は2020年に来日する予定だった」

ー30代に入って、クリスマスの過ごし方はやはり10〜20代の頃とは違っていますか?

スコット:30歳だよ、信じられるかい?(笑)。いやいや、嬉しいんだけどね。でも10年も一緒にグループをやってきたなんて信じられないよ。クリスマスの過ごし方は、10代の頃から変わっていないと思うのが、音楽や食事をみんなで盛大に楽しむってことかな。でも変わったのが、歳をとるにつれて、より家族との絆が深まってるってこと。家族と過ごす時間をすごく大切にしているよ。両親や姉、それにいまでは甥や姪も加わって。そういう時間を大切にしたいんだ。だからいまの僕のクリスマスは、仕事をせずに、家族や愛する人たちと過ごすって感じかな。前から同じように考えてはいたつもりだけど、年々そういう気持ちが強くなっているんだ。

ーこのアルバムからもそんな気持ちが伝わってきます。先ほどルーツに戻ったと話されていましたが、同時に違いや成長も聴こえてきますよね。

スコット:そうだね、すごく違っているよ。愛情や感情がたっぷりいろんな曲に詰まっているんだ。たとえば「イッツ・ビーン・ア・ロング・ロング・タイム」では“早く会いたくてたまらない”って歌っているし、「マイ・ハート・ウィズ・ユー」は、相手の顔を見るまで100年待つとかって話だし、「リヴァー」もそういう曲だよね。ひしひしと心に訴える曲が並んでいる。かと思えば、劇画調で壮大な「三隻の船」では足を踏み鳴らしたり、ヴァイオリンやチェロを導入した「オーヴァー・ザ・リヴァー」なんて『パイレーツ・オブ・カリビアン』みたいな感じだし(笑)。とてもクリエイティヴなアルバムだよ。誇らしく思っている。

ーザ・レスキューズの「マイ・ハート・ウィズ・ユー」は、アカペラ・グループの定番ソングのようですが、以前から歌っていたのですか?

スコット:実はザ・レスキューズのメンバーのひとりが始めたのが、南カリフォルニア大学のソーカル・ヴォーカルズ(SoCal VoCals)というアカペラ・グループなんだ。で、僕はそのグループに参加したのがきっかけでアカペラの魅力に取り憑かれていった。という、ちょっとした不思議な縁があるんだ(笑)。この曲というのは、多くの人に感動を与えて、アカペラのコミュニティではよく知られている曲なんだ。大学のアカペラ・グループやコーラス部ではよく歌われる。でも一般的にはあまりお馴染みじゃないって曲なんだ。僕が大学にいた時も、この曲の作者がアカペラ・グループの創設者ということもあり、毎年この曲を歌うのが慣しとなっていた。いつも歌うたびに、この曲の素晴らしさに感動させられるよ。豊かなハーモニーと美しいメロディに心を奪われる。ペンタトニックスをスタートしたとき、この曲をカースティンに聴かせたんだけど、そしたらメンバー全員のお気に入りになったんだ。僕たちのオリジナル曲「ラン・トゥ・ユー」などのハーモニーにも、この曲の影響は大きいよ。僕たちのキャリアにも大きな影響を及ぼしている。でも、一度もカバーしたことがなかったんだ。今回、心に響くアルバムを作りたかったから、取り上げる絶好のチャンスじゃないかと考えた。重要な意味合いを持つこの曲を歌ってみようと思ったんだ。

ーそんな裏話があったとは知らなかったです。アルバムにはザ・ビーチ・ボーイズの「リトル・セイント・ニック」も取り上げられていますが、さすがに彼らとは知り合いじゃないですよね?(笑)

スコット:うんうん、でもそんな気はするけどね(笑)。ビーチ・ボーイズって最も成功したハーモニーを歌うグループじゃないかと思うんだよね。僕たちは彼らの歌を聴いて大きくなったし、彼らの曲ならほとんど全部知っている。だからこの曲は実のところ、このアルバム中で最もスムーズにレコーディングできた曲だったよ。というのも、彼らがすでに完璧なハーモニーのアレンジを施してくれていて、僕たちのために楽譜を書いてくれていたようなものだから(笑)。

ー逆に、このアルバム中でもっとも歌うのが難しかった曲は何ですか?

スコット:う〜ん、そうだな、最も苦労したのは、間違いなく「ザ・プレイヤー」だね。そもそも尺が長いし、伸ばす音が多いから、とっても歌うのが大変なんだ。ミッチやカースティン、僕を含めて全員が大声を張り上げて、ずっと歌い続ける構成だから、一番体力を使って疲れたよ。ただ同時に、最も達成感が得られたのも確かだし、みんなの心に訴えかけて、感動を呼び起こしてくれることを願っているよ。



ーとなると、まもなくスタートするアメリカでのクリスマス・ツアーも大変そうですね。

スコット:これまで以上に喉に負担の掛かるツアーになりそうだよ(笑)。「ハレルヤ」や「ザ・プレイヤー」、「アメイジング・グレイス」や「リトル・ドラマー・ボーイ」など熱唱系の曲が多いから。でも、とても美しいと思うな。

ー観客を前に歌うのは久しぶりなんですか?

スコット:すごく久々だよ。何しろちゃんとツアーを行うのは、1年10カ月ぶりとか。ほとんど2年ぶりだよね。その間には1〜2度、小規模なプライベート・パーティなどで歌ったことはあるけれど、それくらいかな。1時間半の本格的なショーを披露するのは、本当に久しぶり。

ー来年には、延期になっていた『ラッキー・ワンズ』の北米ツアーも予定されていますが、かなり大仕掛けなものになると以前に語っていましたよね。

スコット:パンデミックのおかげで、すっかり延び延びになっているワールド・ツアーだけれど、来年の開催時には、とことん本気で思いっきりやつもりだよ。みんなが大好きな曲やカバー曲を全て披露するし、みんなにも一緒に歌ってほしいんだ。もちろん『The Lucky Ones』からの新曲も披露する。あとステージに関しては、エレガントで目を引くものにしたいと考えているんだ。しばらく大人しくしていたから、その分思いっきり取り替えさなくちゃね。

ー来日に関しても、そろそろ考えてくれていたりしますか?

スコット:もちろんだよ。いつも日本のことばかり話している。本来ならオリンピックの時期に来日してイベントで歌う予定もあったんだよ。

ー2020年ってことですか?

スコット:元々のオリンピックだから、2020年の方だよね。二転三転したけど、どうにもならなくて、結局コロナのせいで流れてしまったんだ。もしかしたら来年にはツアーで行けるかもって思っているよ。ただ、いい加減なこと言えないからね。延期になってるヨーロッパ・ツアーもあるし、アメリカ・ツアーもあるし、まだ約束はできないな。でも、日本には絶対に早く行きたいと思っているよ。ホント僕たちは日本が大好きなんだ。

ーいつか日本でもクリスマス・ツアーをやってほしいと願っています。街のイルミネーションもキレイですよ。

スコット:だよね、噂には聞いてるよ。すごくキレイだってね。

ーそれでは最後になりますが、日本のファンにメッセージをいただけますか?

スコット:もちろん。日本のファンのみなさん、こんにちは。みんなに会えなくて寂しく思っています。しばらく行けてないけど、早く日本に戻りたいと願ってます。また再会できる日が来るのは間違いないので、そのときまでみんなも元気でいてください。健やかに楽しいクリスマスをお迎えください。(日本語で)ミンナ、ダイスキー! ホントに愛してます。

ー今年のクリスマスはどんなふうに過ごす予定ですか?

スコット:去年はコロナのせいで、みんな離れ離れで、隔離状態のクリスマスだったけど、今年はクリスマス・ツアーがあるから全米を回るよ。その最終地がテキサスなんだ。そのテキサス(スコットの故郷)ではクリスマスイブからクリスマス、それに大晦日や新年も、ずーっと家族と一緒にいるかな。家族とゆっくり過ごすよ。そういう時間って、やっぱり必要だよね。




ペンタトニックス
『Evergreen|エヴァーグリーン』
2021年11月10日 国内盤リリース
視聴・購入:https://PTX.lnk.to/EvergreenJPRS

1. イッツ・ビーン・ア・ロング・ロング・タイム ★ハリー・ジェイムス楽団&キティ・カレンのカバー
2. ワンダフル・クリスマスタイム ★ポール・マッカートニーのカバー
3. 三隻の船 ★イギリスの伝統的クリスマス・キャロルのカバー
4. ホーム・フォー・ザ・ホリデイズ ★ペリー・コモのカバー
5. リヴァー ★ジョニ・ミッチェルのカバー
6. オーヴァー・ザ・リヴァー feat. リンジー・スターリング ★アメリカの伝統的クリスマス・ソングのカバー
7. ザ・プレイヤー ★セリーヌ・ディオン/アンドレア・ボチェッリのカバー
8. エヴァーグリーン ★オリジナル曲
9. フロスティ・ザ・スノーマン feat. アレッシア・カーラ ★アメリカの伝統的クリスマス・ソングのカバー
10. アイ・ジャスト・コールド・トゥ・セイ・アイ・ラヴ・ユー ★スティーヴィー・ワンダーのカバー
11. リトル・セイント・ニック ★ザ・ビーチ・ボーイズのカバー
12. 天なる神には ★伝統的クリスマス・キャロルのカバー
13. マイ・ハート・ウィズ・ユー ★ザ・レスキューズのカバー
14. ウィー・ウィッシュ・ユー・ア・メリー・クリスマス(おめでとうクリスマス)★イギリスの伝統的クリスマス・キャロルのカバー

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