米政府、幻覚剤研究に約4億5000万円の研究資金提供

Illustration by Carolina Rodríguez Fuenmayor for Rolling Stone

この秋、米連邦政府は50年ぶりに、古典的幻覚剤のセラピー・治療における有効性を調査するための研究資金提供を承認した。ジョンズ・ホプキンス大学、アラバマ大学バーミンガム校、ニューヨーク大学が共同で行う予定の研究は、マジックマッシュルームの主要な精神作用成分であるサイロシビンが、たばこを止める助けになるかどうかを調査するというもので、米国立衛生研究所より400万ドルの研究資金が提供されることになっている。

精神医学と行動科学を研究するジョンズ・ホプキンス大学の教授で、今回のプロジェクトの主任でもあるマシュー・ジョンソン博士は、「この決定は、遅れをとっている幻覚剤の研究を今後固めていくための大きな一歩です」、「国立衛生研究所は今やアメリカだけでなく、世界中においても最大のバイオメディカルサイエンスの資金提供者となりました。事実、いくつかの製薬会社が手がけているこうした分野の研究の大半が、国立衛生研究所からほとんどの資金提供を受けてきています」と語る。

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現在私たちは、「サイケデリック・ルネサンス」と呼ばれる流れの真っ只中にいる。ニクソン大統領が1970年に規制物質法にサインした頃、当時流行していたセラピー用の手段としての各種幻覚剤の研究はパッタリと中止された。1990年代に入るとDMT(ジメチルトリプタミン)という自然由来の幻覚剤の研究が始まり、2000年代にはサイロシビンがうつ病などの精神疾患の治療に効果があるという調査結果をジョンズ・ホプキンス大学が発表、打ち止めとなっていた幻覚剤研究が再びスタートした。しかし、そのような研究に対する資金提供はフィランソロピーや個人的な投資目的の小規模なものとなっていた。

あらゆる臨床試験には高額な費用がかかる。米国医師会の出版する情報誌JAMA(TheJournal of American Medical Association)に取り上げられた研究によると、アメリカにおいて、新たな薬品を開発するために必要とされる費用の中央値は985万ドル(約1120億円)とされている。国立衛生研究所は数十年前の時点で、メンタルヘルスのための幻覚剤の見込みを調査する早期研究の最大の資金提供者で、LSDの効果を研究した130以上の臨床試験に資金を提供してきた。しかし、幻覚剤を巡る政治やメディアの逆上を受けた政権が規制物質法を施行。その結果として同研究所の研究もストップしてしまった。しかし、現在起こっているサイケデリック・ルネサンスは指数関数的な成長をしており、営利目的で幻覚剤の開発を行う企業は、幻覚作用を持つ化合物へ数百万ドル単位の投資を行い、米食品医薬品局の認可を得、市場への進出を行なっている。

ジョンソン博士は「多くの人々が「どうやって麻薬取締局や食品医薬品局を説得したの?」と尋ねてきます。しかし、それらの機関はもう数十年前からすでにこうした研究を行っていたのです。正しい実験や研究を行うための要項を注意深く確約すれば、それは承認されるでしょう」と語る。

ジョンソン博士のような研究者たちとっては幸運なことに、ついに状況は変わり始めている。ジョンソン博士と同僚の研究者たちが今回受けた承認は、彼らに国立衛生研究所の下部組織である薬物乱用研究所から大量の資金提供をもたらした。喫煙習慣のある人たちの禁煙をサポートするための研究を行っていた彼らにとって、サイロシビンのうつ病やPTSDへの効果や、まだ明らかになっていない作用の研究という条件はまさに適格であった。

Translated by Kazuhiro Ouchi

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