Spotifyは日本に何をもたらした? TaiTan×玉置周啓×柴那典が語る5年間の地殻変動

写真左から、柴那典、TaiTan、玉置周啓(Photo by Kana Tarumi)

Spotify Japanがローンチしてから今年11月で5周年。この間、ストリーミングによる新たな再生方式の普及やプレイリストを利用したリスニングスタイルの定着によって、CDの売上やヒットチャートのルールなど日本の音楽市場全体にも地殻変動ともいうべき巨大な変化が起きている。さらに昨年春からの新型コロナウイルス感染拡大により、長引くステイホーム期間中にPodcastを利用する層も増えるなど「音声メディア」の重要性にも注目が集まっている。人々のライフスタイルにも計り知れない影響を与えたSpotify。それにより音楽シーンはどのように変化してきたのか。

そこで今回は、ポッドキャスト番組『奇奇怪怪明解事典』も好調な玉置周啓(MONO NO AWARE)、TaiTan(Dos Monos)と音楽ジャーナリストの柴那典を迎え、この5年間にまつわるSpotifyのデータを踏まえながら、ストリーミング・プラットフォーム、プレイリストやポッドキャストといった新しいサービスが、日本の音楽シーンやカルチャー全体にもたらしたものについて語り合ってもらった。


Spotifyとの出会いと活用術

─Spotifyが日本に上陸してから今年で5年が経ちます。柴さんは早い段階からSpotifyをはじめとするストリーミングプラットフォームやネット上の音楽カルチャーに注目してこられたと思うのですが、この5年間を振り返ってどのようなことを思いますか?


柴:僕が『ヒットの崩壊』という新書を出したのが2016年11月で、まさにSpotify上陸直後だったんです。余談ですが、この本の帯を緑にしているのは、実は担当編集と「Spotifyイメージを出そう」と話し合ったからなんですけど(笑)、当時はまだストリーミングに対する認知度も低かったから、そこからの5年でだいぶ変わったなと思いますね。

─今のような普及のされ方は、当時どのくらい予測していましたか?

柴:当然普及はするだろうと思っていましたし、なんならもっと普及するんじゃないかなと当時は思っていました。僕自身もアジテーターのように、「なんでみんな、使わないの?」くらいの勢いで原稿を書いていた記憶がありますね。


柴 那典
1976年神奈川県生まれ。音楽ジャーナリスト。ロッキング・オン社を経て独立、音楽を中心にカルチャーやビジネスなど幅広くインタビューや記事執筆を手がける。2021年11月に新刊『平成のヒット曲』(新潮新書)を上梓。著書に『ヒットの崩壊』(講談社現代新書)『初音ミクはなぜ世界を変えたのか?』(太田出版)、共著に『渋谷音楽図鑑』(太田出版)。
Photo by Kana Tarumi



─玉置さんとTaiTanさんは、いつ頃からSpotifyを利用していますか?

TaiTan:僕は早かったですよ。上陸して半年とか1年以内にはインストールしていた記憶があります。それまでは他社のストリーミングを使っていましたが、SpotifyのUIやUXが全く新しく新鮮なイメージがあって。そこからずっと愛用していますね。

玉置:僕は、実際に導入したのは去年くらいなんです。実際に使ってみると、プレイリストなど他にない仕様だなと思って重宝するようになりました。誰も知らないような海外のアーティストまで登録しているイメージもあって、それも導入する動機の一つでしたね。


TaiTan(タイタン)
Dos Monosのラッパーとして2018年にアメリカのレーベル・Deathbomb Arcと契約。これまでに『Dos City』『Dos Siki』『LARDERELLO』の3枚のアルバムをリリース。ポッドキャスターとしては、Spotify独占配信中のPodcast番組『奇奇怪怪明解事典』にて、JAPAN PODCAST AWARDSのSpotify NEXT クリエイター賞を授賞。また、クリエイティブディレクターとしてもテレ東停波帯ジャック作品『蓋』などを手がける。
Photo by Kana Tarumi



玉置周啓(たまおきしゅうけい)
1993年生まれ。MONO NO AWAREのヴォーカル&ギター。東京都八丈島出身の玉置と加藤成順(Gt)が、大学で竹田綾子(Ba)、柳澤豊(Dr)に出会い2013年に結成。2021年6月、最新アルバム『行列のできる方舟』をリリース。加藤成順とのアコースティックユニット「MIZ」としても活動中。
Photo by Kana Tarumi



TaiTan:Spotifyの中で、僕がよく利用しているのは「Spotify Radio」という機能。どういうアルゴリズムになっているのかよく分からないけど、例えば気に入った楽曲があったらアーティストページに飛んで、そのアーティストの「Radio」を聴いていると、似た雰囲気の楽曲がずーっと流れるんですよ。あれは本当に新鮮でしたし、今もSpotifyを利用している理由の一つでもありますね。


Spotify Radioではアーティスト、アルバム、プレイリスト、曲に基づいて作成された楽曲コレクションを聴くことが可能。いつもフレッシュな内容を楽しめるよう、随時アップデートされる。

柴:僕もTaiTanさんと使い方は似ています。アーティストページにある「ファンの間で人気」というところに、関連するアーティストがずらっと並んでいて、それが他のプラットフォームの他のサービスと比較しても精度が高い気がするんですよ。例えば、「このバンドの周辺にはどういうアーティストがいて、どういうコミュニティが形成されているのか」みたいなことが、Spotifyを掘っているだけでも何となく見えてくるし、そういうことを調べていくのが楽しかったりして。

玉置:あとは、例えばブラジル人が今聴いているホットな曲などもプレイリストになっていたりするじゃないですか。そういうのを見つけて、全く知らない国をちょっと旅する感覚で聴くのも楽しいですね。

柴:それ、めっちゃ分かります。

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