PassCode南菜生が語る、「ラウドな音楽性と狂騒感」を求める理由

PassCodeの音楽に宿る「覚醒感」の正体

ー楽曲を聴いていると、スクリーモ以降のポストハードコアにレイヴミュージックを混ぜていくものが大半だと思うんですね。奥底にあるヘヴィな感情を引きずり出す音楽性と、原始的なダンスを呼び覚ますトランス感を足しているというか。そういう音楽性によって覚醒感を得られるところもあるんですか。もしくは全然違うのか。

PassCodeの音楽性で言うと、私個人はラウドと呼ばれる音楽に詳しかったわけではないんですね。でもFear, and Loathing in Las VegasやBABYMETALは好きで、それはジャンル感としてというより、楽曲のキャッチーさやメロディの力に惹かれていて。なんなら、うちのメンバーでラウドやメタルを日頃から聴いてるのは有馬えみりくらいなんですよ。もっと言えば、ラウドロックはPassCodeの要素としては大きいけど、それが絶対だとは思っていないということで。むしろ個々の好きなものがバラバラだからこそ自由で面白いグループになっていけるんですよね。なので、ラウドな音楽性だからこそ自分が覚醒できるっていうよりは、とにかく自分が歌と言葉で伝えたいものがステージで溢れ出すっていう感じかもしれないです。曲を作ってくれている平地さん(平地孝次)もラウドロックを作ることに固執しているわけじゃなくて、ライブ感のひとつとしてラウドロックやシャウトを用いているだけだと思うんですよね。

ーただ、PassCodeがPassCodeとして確立されてきた理由として、いわゆるアイドル的ではないと言われるラウドな音楽をアスリート的に魅せていった部分はかなり大きいと思うんです。南さん自身も、そこに活路があるということには自覚的だったんですか。

それはあったと思います。そもそも今田と高嶋(楓)が加入する以前は、可愛らしくてポップな曲で踊っているグループだったんですよ。でもその時はなかなか陽の目を浴びず、先が見えない状態だったんですよ。そこで今田と高嶋が加入したのを機会に、「このまま続けるだけじゃ未来がないよね」っていう話を平地さんとして。ちょうどその時は、女性アイドルと重たい音楽を合わせたら当たるっていう流れが生まれ始めていた頃で、BABYMETALみたいに世界的なアーティストが出てきた頃は、地下アイドルのシーンでもラウドな音楽性が増えていて。

ーマッチョかつ男社会のものになってしまっていた音楽を、性別もシーンも問わず鳴らしていいじゃないかっていう。それは音楽に限らず社会的な流れも少なからず関与しているものだったと思います。

そういう流れもあったので、じゃあPassCodeが変革していくなら、単に可愛らしいアイドルをやり続けて埋もれてしまうよりも戦う人が少ないフィールドで尖ったものを見せるほうが道が見えるんじゃないかと。そこでラウドな音楽性にシフトしようということになり、私個人も元々ロックバンドが好きだったので、そのほうがいいっていう話をして。ただ、ラウドに方向転換した当初の楽曲は、可愛らしいアイドルがお遊びの延長でラウドっぽいことをやっていただけだと自覚していて。でもだんだん、女の子がヘヴィな音楽をやっている、しかもバンドとは違う形態であるっていう面白みの部分で動員が増えていって、2016年にメジャーデビューすることができたんです。で、その時に当然、楽曲のクオリティ自体を上げていくことがマストだよねっていう考え方になっていったんです。それが今のPassCodeに繋がっている大きな分岐点だと思っていて、PassCodeの音楽の部分が確立されたのはその時だった気がしますね。そこからの積み重ねによって、ラウドに固執しなくても大丈夫っていう考え方にだんだん変化してこられたんでしょうね。

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