PassCode南菜生が語る、「ラウドな音楽性と狂騒感」を求める理由

SUPER BEAVERから受け取ったもの

ーSUPER BEAVERのどんなところが支えになったんですか。

SUPER BEAVERはギターの柳沢(亮太)さんが作っているのに、ヴォーカルの渋谷(龍太)さんが話す言葉には血が通っていて、目の前のひとりに対して話しているような説得力があるんですよね。それをライブで目の当たりにしたのが貴重な体験だったんです。自分が曲を作っていないとしても、自分の言葉で目の前の人に何かを伝えられる人になりたいと思ったんです。

ー「PassCodeは終わった」と言われる中でのナニクソ精神があって、そこからPassCodeを動かしていくための力を求めた結果、自分の人間力っていう部分を濃くしようと思ったと。で、そのヒントをSUPER BEAVERから得たっていう話ですよね。

そうですね。そこから、私は自分という人間を磨くことで血の通った言葉を発することを自分の武器にしようと思い始めました。まあ……当時の私は19歳でしたし、「たかだか19歳のアイドルが何言ってるんだ」っていう斜に構えた感じがあるのもわかってたんです。でも、何を言われても自分の思うことをステージで伝え続けようと思った結果、やっと徐々に認められるようになって、私の言葉がPassCodeのひとつの武器として伝わるようになってきた気がしていて。年齢とか性別による偏見、うがった見方があること自体がおかしいとは思うけど、とにかく自分を貫くことでその状況を変えてこられたんじゃないかっていう……そういう瞬間をたくさん経験してきたので、ここまでの過程は間違いなく自信になってますね。そういう自信が芽生えてきてからは、アイドルと呼ばれてもいいし、グループと言われてもいいし、人によってはバンドと捉えられてもいいと思えるようになりました。

ーライブを拝見した時の感覚も含め、今のお話の真意はよくわかります。アイドルという型をやるんじゃなく自分の生身を磨いてきたからこそ、自己との闘いを繰り広げているようなアクトになるんだろうなと。

ああ、そうかもしれないですね。ステージ上だけでカッコつけた話をしても、ペラペラな言葉はすぐにバレるじゃないですか。だからこそ日々努力して胸を張れる自分でいることが大事だし、先ほど話したように、日頃の自分の生き方をそのまま表現できるかどうかを一番意識しているので。青臭いこと言ってるねって他人から言われても、私は堂々とその言葉を吐けているから大丈夫だって胸を張るために日々努力しているんでしょうね。大前提として、歌とダンスを磨くこと。その上で、自分の奥底にある気持ちを真っ直ぐに伝えること。それが私の武器だと思います。……まあ、以前はもっと背伸びしていたし、昔のほうが偉そうなことを言おうとしてた気がするんですけど。

ーそれは何故ですか。

最初は「認められてない」っていう気持ちが強烈にあったからだと思います。居場所がなかったんですよ。アイドルのイベントに出れば「重たいサウンドをやりたいならバンドのほうでやれよ」って言われて、ロックバンドのイベントに出れば「アイドルのくせに」って言われて。どの場所でも認められていないことに対して悔しさがあったし、見返したい気持ちが原動力になってたので。で、それがライブの場所に出てしまっていたんですよね。だから自分を強く見せるような言葉を選んでいた気がするんですけど。でも今は、悔しいとか見返したいっていう気持ちが原動力になることが少なくて。お客さんがいること、チームがあること、どうなっても一緒に続けて行こうと思えるメンバーがいること。いろんな人の存在があって続けていられる気持ちがあるので、その人達に「PassCodeを見守ってきてよかった」と思って欲しい。その気持ちが今の原動力だと思います。負の感情を燃やすんじゃなく、何を大事にしたいのかがハッキリしてきたって言えばいいんですかね。だからライブの雰囲気も明るくなってきた気がするんですよ。それこそ『ZENITH』の頃は力でねじ伏せようとしてたし、その曲に引っ張られて刺々しくなっていた部分もあって。そう考えると、作品を出すごとに曲が私達の等身大に近づいてる感覚があるんです。


PassCode(Photo by Shingo Tamai)

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