ザ・ビートルズ解散劇の裏側 メンバー4人の証言と映画『Get Back』が伝える新発見

Photo by Ethan A. Russell/ (C) Apple Corps Ltd.

ドキュメンタリー作品『ザ・ビートルズ:Get Back』がまもなく配信される。本作の公開を記念して、米ローリングストーン誌のカバーストーリーを完全翻訳。「ロック史上最大の解散劇」の裏側とメンバーの結束、そして彼らの作品が今なお愛される理由とは。メンバー4人による当時の証言、ピーター・ジャクソン監督の発言も交えながら、前後編合わせて2万字超の大ボリュームで掘り下げる。


『ザ・ビートルズ:Get Back』
PART1:11/25(木)/ PART2:11/26(金)/ PART3:11/27(土) 各日17:00より配信スタート
※ディズニープラス加入者の方は配信スタート以降、いつでも好きな時間に視聴可能


1969年1月のある陰鬱な月曜の朝、ザ・ビートルズはかつての場所へ戻ろうとあがいていた。「ゲット・バック」と銘打ったプロジェクトは、パーフェクトなアイディアに思われた。4人の若者がそれぞれの楽器を携え、スタジオ入りする準備は万端だった。自分たちの原点に戻れば、かつてのように霞の中から名曲が生まれると信じていた。ジョン、ポール、ジョージ、リンゴは、1月18日にテレビの特別番組への出演が決まっていた。実に数年ぶりのライブになるはずだった。顔を合わせて数週間リハーサルすれば、何かが起きると思っていた。彼らはそうやって何度も奇跡を起こしてきたし、期待を裏切ることもなかった。

良い兆候だ。月曜の朝、まずポールが姿を現した。そしてリンゴも。バンドのセッションを撮影するカメラクルーも準備ができた。テレビ番組の宣伝用に、30分程度のリハーサル映像を公開する予定だった。ビートルズの放つ光り輝くオーラで、世界を圧倒する準備は万端だ。少なくともポールとリンゴは。ところでジョンとヨーコはどうしている? ジョージはどこだ?

ジョージの場合は、バンドからの脱退を宣言していたから、少々ややこしい。前週の金曜日にジョージは、スタジオで作りたての曲「All Things Must Pass」をメンバーへ一生懸命に伝えようとしていた。その間もカメラは回り続けた。当時ヘロインに溺れていたジョンは、ジョージをあからさまに嘲笑った。ジョージは「またクラブで会おう」と言い残して、スタジオを飛び出した。ジョンは大して気に留めなかった。「週明けの月曜か火曜に戻って来なければ、エリック・クラプトンに弾いてもらおうと思っていた」とジョンは言う。「問題は、ジョージが辞めてもビートルズを続けるべきかどうか、ということだ。俺は続けたい。他のメンバーを入れて、続けるべきだ」

月曜になってもジョージは現れなかった。ジョンとヨーコの姿もない(ついでに言えばクラプトンもいない)。ポールとリンゴは、当時流行っていた(ザ・ファウンデーションズの)「Build Me Up Buttercup」を演奏しながら時間を潰した。関係者が集まって話し合いが始まり、常に周りをうろつくヨーコの存在に非難が集中した。ところが驚くことに、ヨーコを擁護したのはポールだった。彼はラヴストーリーに弱い。何と言っても彼はポール・マッカートニーだから。しかし同時に、彼の最も長い付き合いの親友で、最も問題が多く冷酷で手に負えない友人にとって、ヨーコとのロマンスがどれほど重大な意味を持つか、ということも理解していた。「それほど悪くはないさ」とポールは断言する。「彼らが一緒にいたいというなら、構わない。若いカップルには一緒に居させてやればいい」

Translated by Smokva Tokyo

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