岡村靖幸が禁断のエロスに取り組んだ『DATE』、当時のプロモーターが振り返る



田家:「J-POP LEGEND FORUM 再評価シリーズ 第1弾」。11月16日に初めてアナログ盤の『家庭教師』が発売になる岡村靖幸さんのEPIC時代を辿る1ヶ月。今週はパート3。1988年に発売になった2枚目のアルバム『DATE』についてお送りしました。ゲストは当時のプロモーター、現在は音楽制作事務所ニューカム代表取締役の西岡明芳さん。そして現在の担当、ソニー・ミュージックダイレクト・福田良昭さんをゲストにお送りしました。流れているのはこの番組の後テーマ、竹内まりやさんの「静かな伝説」です。

アルバム『DATE』。禁断のエロス。セックスという言葉を使う時にどこかで躊躇してしまう、僕らのような人間ってまだいるわけで。そういうことをポップミュージックで真正面から取り組んだのが『DATE』だと思いました。1988年がどんな時代だったか。村上龍さんの『トパーズ』という小説がありました。風俗で働く女性が主人公だった連作の小説だったんですね。中には倒錯した性というのもテーマになったりして、時代に蠢いている人間の愛と欲望みたいな。それが赤裸々に描かれていて、ベストセラーになったんです。

つまり、1988年、1989年というのは日本の戦後史の中で世の中が最もエロティックで、きらびやかな年だった。そう考えると、『DATE』が違う光り方をしてくるなと思いました。音楽業界はエンターテインメントであり、華やかな世界ですから、そういう時代のど真ん中にあったと思うんですね。みんなどこか浮かれた生活をしていて、その中でデビューしたばかり20代前半のシンガー・ソングライター、とても多感な音楽の才能が溢れていた彼が何を見たのか、時代を感じていたのか、恋愛に対してどう思ったのかを歌ったアルバムというふうに考えると、歴史的な1枚だろうと思います。10代に向けた音楽として完成している。今の草食と呼ばれている少年少女にどんなふうに聴かれるんだろう。岡村靖幸さんは時代と人間というテーマで格闘したシンガー・ソングライターだった。あらためて彼の稀有な存在を感じた、そんなアルバムでありました。


左から、福田良昭、西岡明芳、田家秀樹



<INFORMATION>

田家秀樹
1946年、千葉県船橋市生まれ。中央大法学部政治学科卒。1969年、タウン誌のはしりとなった「新宿プレイマップ」創刊編集者を皮切りに、「セイ!ヤング」などの放送作家、若者雑誌編集長を経て音楽評論家、ノンフィクション作家、放送作家、音楽番組パーソリナリテイとして活躍中。
https://takehideki.jimdo.com
https://takehideki.exblog.jp

「J-POP LEGEND FORUM」
月 21:00-22:00
音楽評論家・田家秀樹が日本の音楽の礎となったアーティストに毎月1組ずつスポットを当て、本人や当時の関係者から深く掘り下げた話を引き出す1時間。
https://cocolo.jp/service/homepage/index/1210

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Rolling Stone Japan 編集部

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