ヤング・マーブル・ジャイアンツを構成する5枚 アリソンが語るポストパンクという青春

『Colossal Youth』ジャケット、写真中央がアリソン・スタットン

パンク・ロックという革命がロック・シーンに衝撃を与えていた1978年。スコットランドのカーディフで3人の男女がバンドを結成した。スチュワートとフィリップのモクサム兄弟、紅一点のアリソン・スタットンによるヤング・マーブル・ジャイアンツ(以下、YMG)は、音を極限まで削ぎ落とし、ギター、ベース、オルガンが織りなす幾何学的なアンサンブルとチープなリズムボックスで唯一無二のサウンドを作り出した。そのミニマルなサウンドはパンクとは対極の静寂を漂わせながらも、そこにはパンクのエネルギーが圧縮されていた。しかし、彼らは1stアルバム『Colossal Youth』(1980年)を発表して解散。『Colossal Youth』はカート・コバーンを始め様々なミュージシャンに影響を与えながら、ポスト・パンクの名盤として聴き継がれていくことになる。

そして今年、40周年記念盤が国内盤リリースされるにあたって、ヴォーカルのアリソン・スタットンにインタビューを敢行。彼女のお気に入りのアルバム5枚を選んでもらい、YMGについての話はもちろん、彼女の音楽的背景、YMG解散後に結成したウィークエンドについてなど幅広く話を訊く、というヴォリュームたっぷりの内容だ。取材はアリソンの心のこもった挨拶で和やかに始まった。

※もう一人の中心人物、スチュワート・モクサムが選ぶ10枚も後日掲載予定。



アリソン:(日本語で)こんにちは、元気ですか?

―元気です(笑)。今回はインタビューのためにアルバムをリストアップして頂きありがとうございました。

アリソン:どういたしまして。

―まずは、今回選んで頂いた5作品について伺いたいのですが……。

アリソン:5枚に絞るのは本当に大変な作業だったわ。候補は何百枚もあって、昔からずっと好きなアルバムもあるし、最近よく聴いている新しいお気に入りもある。でも、企画の趣旨を考えると新しい作品は少し違うかなと思って、思い切って削ることにしたの。だから、今回選んだ5枚のアルバムは、何年もの間、何度も繰り返し聴いる私の“レギュラーアルバム”ともいえるものよ。この5枚の他にも昔からずっと聴いているアーティストの作品はたくさんある。ブライアン・イーノ、デヴィッド・ボウイ、ジョニ・ミッチェル、トム・ウェイツとかね。だから5枚に絞るのは本当に難しかったわ。

―セレクトは大変だったと思いますが、YMGファンとしては興味深いラインナップです。最初に選んで頂いた5作品についてコメントを頂いて、その後にYMGやあなた自身の音楽活動について話を聞かせてください。

アリソン:問題ないわ。ベストを尽くすわね!

―ではまずは、コンゴスの『Heart of The Congos』。レゲエの名盤ですね。

アリソン:このアルバムを聴いた瞬間に、そのハーモニーの美しさにすっかりやられてしまったの。それに、リズムが素晴らしい作品だと思うわ。このアルバムはスタジオ録音で、リー・スクラッチ・ペリーがミックスを務めたんだけど、彼がプロダクションを務めた作品の中でも最高峰と言っていいんじゃないかしら。曲の完成度もとても高いし、リズムも素敵だけど、特に私はハーモニーの素晴らしさに惹かれた。このアルバムを聴く度に、心に迫るものがあるのよ。このアルバムが発売されたのは1978年だけど、当時は数量限定のヴァイナルで発売されたんじゃなかったかな。それを傷むまで繰り返し繰り返し聴いたから、後から再発盤も買った。だから今、私の家には同じアルバムが2枚あるのよ。



―レゲエやダブはパンク・シーンに影響を与えましたが、このアルバムがYMGやあなた個人の音楽作りに影響を与えたところはありますか?

アリソン:はっきりとわかる影響はないかもしれないけれど、雰囲気というのかしら、そういうものは私たちのサウンドに反映されていると思う。私の個人的な音楽作りにも、そうした雰囲気のようなものは込められていると思うわ。

―続いて、ファニア・オールスターズ『Our Latin Thing』。ニューヨークのラテン・ミュージシャン、ニューヨリカンたちが集結したグループですね。

アリソン:確かニューヨークで1971年頃にレコーディングされたものだと思う。パッションに溢れていて素晴らしい作品よ。私が持っているのはCDとDVDがセットになっていて、DVDもとても見応えがあるの。私はラテン音楽が大好きなんだけど、このアルバムにはラテン音楽のすべてが詰まっていて、私にとって本当に大きな意味を持つ作品ね。ラテン音楽が持つパッションやドライヴ感がとても好きなの。私の子供達はこのアルバムを聴いて育ったから、ラテン音楽が身体に染みついているんじゃないかしら(笑)。


Translated by Yumi Hasegawa

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