Spotifyが描くエンタメの未来、音楽と音声コンテンツの可能性 日本法人新代表が語る

5周年を迎えたSpotify日本法人であるスポティファイジャパン株式会社の代表取締役に就任したトニー・エリソン氏(Photo by Mitsuru Nishimura)


Spotifyが描く未来へのヴィジョン

―Spotifyとしては、5年先、10年先を見据えた先に、どんな世界を実現していたいと思いますか。

トニー:10年先はさすがにわからないですね。僕たちが全く予測できないテクノロジーが登場しているかもしれない。ただ、僕が個人的にも強く思っているのは、日本のコンテンツがもっともっと海外に出ていってほしいということです。その後押しをしなきゃいけないと思っています。Spotifyとして日本のコンテンツを世界のネットワークで発信していきたいし、それを援護していきたい。また、日本国内においては、「Spotifyは一歩先を進んでいる」というイメージでありたいですね。とは言っても、競争の中で頭ひとつ抜きん出ているということではなく、「Spotifyはなにか面白いことをやる」とか「こういうところにまで気がついてくれる」と思われるような存在でありたい。そうすれば、きっとファンにもアーティストにも愛されるプラットフォームに自然になっていると思います。



―これは個人的な印象ですが、Spotifyはサービス側の顔が見えるところもポイントとして大きいと思います。プラットフォームはメッセージ性やメディア性を打ち出さない中立的なものも多いと思うんですが、こうしたインタビューも含めて、Spotifyはメディア的な存在感が強い。「Spotifyは面白いことをやる」というのは、そういったことにも関連することでしょうか。

トニー:ストリーミングサービスの分野では、音楽の他にもいろんな事業をやっている大企業が多いですよね。それに対して、Spotifyはオーディオという一つのことしかやっていない。そこには確固たるミッションが根底にありますし、独立性もあるので、自分たちの存在意義という輪郭をハッキリさせられる。Spotifyならではの特別な位置づけだと思いますし、そこを活かしていきたいです。勤めている社員一同が同じミッションに共鳴して、同じ方向を向いているというのも、その輪郭に反映されることだと思います。

その上で、僕が個人がリーダーとして大事にするのは、楽しさであり、面白さですね。クリエイターとファンの笑顔につながることを増やしたいと思っています。アーティストやクリエイターにとっては、自分の作品が一人でも多くの人に発見される、ユーザーとの出会いがある。ユーザーから見れば、毎日の生活を彩ってくれるような、気分をちょっとあげてくれるような存在でありたい。そうして多くの個人がハッピーになることで、世の中が少しでもいい方向に向かっていく。そういう願いがあります。

―わかりました。最初にお話しいただいた「5000万人のクリエイターを10億人のユーザーとつなぐ」というミッションについても、もう少し噛み砕いていただければと思っています。これが実現された社会はどういう社会になるというビジョンがありますか?

トニー:クリエイターから見れば、持続的な創作活動を行える健全な経済圏が生まれるということですね。健全な経済圏と言うのは、巨大な格差のある経済ではなく、沢山のクリエイターがきちんと生活できるぐらいの報酬をプラットフォームから得られるということを意味します。我々は「ミドルクラスクリエイター」という表現をよく使うんですが、世界的なトップスターだけじゃなくても、クリエイターとして生活できることが夢じゃなく現実になるような。そうするとモチベーションを持つ人やチャレンジする人も増え、その結果多様なコンテンツが生まれ、人間のクリエイティビティがさらに進化する。一方でファンやユーザーから見ると、現状でも、すでにコンテンツがありすぎるんじゃないかと思っている人は多いと思うんです。だからこそ、数よりも、自分好みのコンテンツに出会えるというのがすごく大事なことだと思います。一つの出会いから、ファンになり、継続的な情熱を持つようになって、自分の生活がより豊かになる。もちろん、Spotifyだけで全てできることではないですが、クリエイターとリスナーそれぞれの生活の充実に寄与できればと思います。

―ネットワークというものは本来的にスケールフリー性を持つので、ごく少数のトップが注目や人気を得ていく構造を持っていると思うんですね。その一方で、ミドルクラスクリエイターの存在が、カルチャーやシーンと呼ばれるものの充実に繋がると思っています。

トニー:本当にそこは大事ですね。Spotifyとしては、いわゆるミドルクラスクリエイターたちをどう後押しするのかは、非常に重視しています。

Photo = Mitsuru Nishimura

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