キング・クリムゾンのロバート・フリップ、愛妻トーヤと語る「夫婦漫才ビデオ」の真相

トーヤ・ウィルコックスとロバート・フリップ(Photo by Toyah Willcox and Carlo Marshall / © 2021 Toyah Willcox)

キング・クリムゾンの来日ツアー「MUSIC IS OUR FRIEND JAPAN 2021」がいよいよスタート。本日11月27日〜12月8日にかけて東京・名古屋・大阪5会場にて開催される。クリムゾンといえば、昨年よりネット上で話題となっているのが、ロバート・フリップと彼の妻トーヤ・ウィルコックスによる動画シリーズ。ロックダウン中に始まったこの企画について、二人が米ローリングストーン誌に語ったインタビューをお届けしよう。(※US版初出:2021年4月)


2020年4月5日、ステイホームを強いられネットサーフィンに興じていた音楽ファンたちは、思いがけないものを目にすることになった。それはキング・クリムゾンのリーダーであるロバート・フリップと、彼の妻でポップシンガーのトーヤ・ウィルコックスがエレガントな衣装を身にまとい、ビル・ヘイリー・アンド・ザ・コメッツによるロック黎明期のアンセム「Rock Around the Clock」に合わせて踊っている動画だった。

英国バーミンガムの近くにある自宅のキッチンで、ウィルコックスのiPhoneを用いて撮影されたその不可解な動画は、昨年の最も意外性に満ちたバイラルシリーズの発端となった。2人はそれ以降、毎週日曜に更新される「Toyah and Robert’s Sunday Lunch」(「ロックダウン・ランチ」と呼ばれることもあった)にて、自宅で他愛のないおふざけに興じるムービーを公開してきた。常にハイテンションのトーヤは魅惑的な姿(ワークアウト用スーツからチアリーダーのユニフォームまで、様々な衣装を着用していた)で大いに歌い、終始真顔のフリップは彼女のそばで黙々とエレキギターを弾いている。



動画の中には2人が一緒に踊るものもあり、チュチュに身を包んだ2人がチャイコフスキーの「白鳥の湖」に合わせて踊る1分強の映像は話題となった。しかし、その多くは1〜2分の簡略化されたカバー動画であり、「Smoke on the Water」や「Sweet Child o’ Mine」から、ソフト・セルの「Tainted Love」(今年のバレンタインデーに公開)や「Smells Like Teen Spirit」、そして「Purple Haze」(トーヤはコーラス部の歌詞を“彼にキスするからちょっと失礼”とアレンジしていた)まで、クラシックメタルやハードロックを中心としたその選曲は、どれもキング・クリムゾンのギタリストとのイメージとはかけ離れたものばかりだった。

2人の動画への反響は大きかった。YouTube上の「Enter Sandman」のカバー動画は770万回以上、ブリトニー・スピアーズの「Toxic」は100万回以上も再生されている。楽曲のチョイスには、トーヤのこれまでの軌跡が反映されている。70年代の英国パンクシーンから登場し、女優として名を馳せるようになった(ザ・フーの『四重人格』を原作とした作品等に出演)彼女は、自身のバンド「Toyah」でフロントを務め、80年代にはソロに転向してパンクやハードロックからゴスまで多様なスタイルに挑戦した。1986年に結婚した彼女とフリップは、90年代初頭に活動していたSunday All Over the Worldや、彼女名義のレコードで度々コラボレートしている。

一連の動画の公開から1年が経とうとしている今、両者がバイラルスターとなる舞台となった自宅のキッチンにて、2人は筆者とのZoomインタビューに応じてくれた。「愛し合っている熟年夫婦によるおふざけだよ」。フリップはそう話す。「自宅のキッチンがその舞台だなんて、信じられないよね」

「楽しまなきゃやってられなかったもの」。トーヤがそう付け加える。「楽しみのない生活なんて、想像さえしたくないわ」

Translated by Masaaki Yoshida

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