ロシアのサイバー攻撃をリークして逮捕された米女性が語る、情報源秘匿の問題

元NSA契約諜報分析官のリアリティ・ウィナー:2021年7月3日、テキサス州キングズビルにて(Photo by Christopher Lee/Redux)

2017年、米国家安全保障局(NSA)の契約社員だったリアリティ・ウィナーがジョージア州で逮捕された。「ロシアのハッカー」についての機密報告書をメディアにリークした罪で実刑判決となり、連邦刑務所で4年間を過ごした。

【写真】米国防総省が公開した「未確認飛行物体(UFO)」

ウィナーが6月に連邦裁判所から釈放されて最初にしたことは、トラブルと名付けた馬の放牧場と、その隣にジム用具専用の小屋を建てることだった。

「放牧場のすぐそばにトレーニング用の小屋を建てたので、いつも馬が忍び込んでくるんです」とウィナー。「自分は今デッドリフトをして、セットの合間に馬を撫でている、と実感する瞬間ですね。今は完璧な人生です」

「完璧」と言っても、4年間連邦刑務所で過ごした人間にとっては相対的なものだ。裁判所から義務付けられた足首の監視機器は外れたが、ウィナーは今後3年間保護観察下に置かれる。すなわち隔週でドラッグ検査が義務付けられ、夜10時以降の外出は禁止。泊りがけの旅行をしたい時には保護観察官の許可を得なくてはならない(許可も必ず得られるとは限らない――ウィナーは来月サン・アントニオで行われるハーフマラソンへの出場を申請したが、担当連邦地区の管轄外に出ることになるため、保護観察官から却下された)。

ウィナーはまだ25歳の時、1枚の機密書類を情報サイト「The Intercept」にメールで送信した。その書類には、2016年の大統領選挙に先立って、ロシア軍が数十人の地元選挙職員を狙ったフィッシング詐欺を企てていたことが書かれていた。

元CIA職員のエドワード・スノーデンは少なくとも1万枚の書類をメディアにリークしたが、その中にはのちにThe Interceptの共同創設者グレン・グリーンウォルド氏とローラ・ポイトラス氏もいた。NSAはスノーデンが170万以上のファイルを持ち出したと主張している。結局ウィナーは秘密漏示罪で懲役36カ月を言い渡された。政府の情報を無許可でメディアに流した罪としては最長の刑期だ。

事件後、The Interceptは非難の矢面に立たされた。書類の信憑性をNSAに確認しようとしたThe Interceptの記者が、うっかり書類の出所を明らかにしてしまったのだ。FBIの宣誓供述書によれば、書類には印刷されて折り畳まれたことを示す折り目がはっきりついていた。事件を担当したFBI捜査官ものちに証言したように、書類を印刷した人物は全部で6人。容疑者候補の中から1人に絞り込まれたのがウィナーだった。捜査官は彼女が職場のコンピュータからThe Interceptにメールしていたことを突き止めた。

Translated by Akiko Kato

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE