岡村靖幸『靖幸』、当時のプロモーターと岡村ワールドについて語る

岡村靖幸





田家:流れているのはアルバムの8曲目「Boys」。ボイスパーカッションで始まっている。

西岡:ボイパですよね。この頃からボイパやっていたとしたら、本当にすごいなと思います。

田家:これを選ばれているのは?

西岡:出だしから一発でやられちゃったって感じの曲ですね。リズム隊も含めて。この印象にすごく残る「コンコンコン」ってものとか、1つ1つの言葉が耳に残って気持ちいいなって感じですよね。

田家:アレンジド&パフォームドby自分っていうのじゃないとなかなかこういうものはできないかもしれませんよね。さっきの「だいすき」を女の子のためにと歌っていましたが、これは男の子の歌ですもんね。当時の男の子の最先端、コンピューターゲーム。

西岡:そういう生活でしたよね。夜は彼も寝ないでやっていたのかもしれないですけど。

田家:この曲のテーマの1つが成長だろうと思ったんですね。〈大人になる前にまず、立派な子供になろうよ〉っていうのがいいなと思って(笑)。

西岡:いいですよね(笑)。僕らもあらためて見返すと、いろいろなことを教えてくれていますよね。

田家:恋愛とは何か、純情ということがもちろん彼の歌のテーマにはずっとなっているんでしょうけど、これは大人と子供という意味で象徴的な曲でもあるんだなと思ったんですよ。〈電車の中で漫画を読む親父ぐらいの人を あーダサイんじゃないのかなあ〉と言っている。

西岡:教育的指導ですよね(笑)。

田家:漫画が流行っていたりしたから、漫画を電車の中で読むのが物分りのいいお父さんだと見せたがるみたいな35歳の中年もいたのかもしれない(笑)。

西岡:でも当時の世相というか、そういうことがいろいろ僕らも今聴くと思い返されてしまって、その後、みんなファミコンを電車でやっちゃこれは目が悪くなるからだめよって感じになっていく。その前ぐらいなタイミングですよね。

田家:アルバムのタイトルの『靖幸』には自画像的な意味があるんだろうと思ったのですが、〈僕たちの生き方って正しいのかな?〉とか、〈子供を育てられるような立派な大人になれんのかなあ?〉 っていう。これも素直だなと思ったんですよ。

西岡:ここでそれまでの恋愛とか、青春とかっていうところから徐々にアルバムの中での変化というか、この曲で聴くことができるので。まあ、ちょっと驚きますけども。

田家:福田さんが前作の『DATE』をまさに青春そのものと言われましたけど、『DATE』の中の青春と『靖幸』の中の青春はちょっと違いますよね。

福田:違いますね。もちろん、真っ只中にはいるんですけどたしかに気持ち的とか、精神的な成長というのはこの中で既にあったり、この曲なんかそうなんですけど。それが『家庭教師』に移っていくんですよね。またさらに成長して。過程と言うと、ちょっと言葉は違うのかもしれないんですけど、岡村くんの気持ちというか、感情というか、言葉と言うというか。そういったもの、芯の部分が作品の中で成長していく。それを『DATE』、『靖幸』、『家庭教師』って繋げて聴いていくと、そのへんがよく分かるんじゃないかなと思いますね。

田家:成長三部作であり、青春三部作である。

福田:だと思いますね。

西岡:音楽的な部分でもそうだと思うんですよね。詞の世界観もそうだし、どんどん成長していることが垣間見える。すごいですねこの三部作は。

田家:アルバムの10曲目「Punch↑」には〈戦争なんか おきたらどーすんだよ〉って歌詞もありました。ちゃんとこの国はっていう批評的な世の中に対しての目がありますよね。

西岡:あるねー。本当にいろいろなことを見ていたし、いろいろなことを感じていて、すごいと思いますね。それしか言いようがないな。


岡村靖幸『靖幸』ジャケット写真

田家:西岡さんはこのアルバムで離れるんですよね?

西岡: EPIC内なんですけど、変わることになります。残念ではあったんですけど、そういうことで言うとこの三部作で福田くんにバトンタッチという感じだと思います。

田家:福田さんはバトンタッチされた時はどう思われたんですか?

福田:とてつもない才能の持ち主だし、『家庭教師』で申し上げたかもしれないんですけど、僕でいいのかなっていうのはまず最初の感情でしたね。僕みたいな人間が彼の音楽をプロモーションで伝えられるのかみたいな。申し訳ないかもしれないという思いがすごい強くて、必死になって彼についていこうと思ったような気がします。

田家:そういう意味で『DATE』、『靖幸』、『家庭教師』この3枚。『yellow』もそうですけど、EPIC時代の岡村靖幸さんがちゃんと世の中に評価されている感じはありますか?

西岡:評価ってその時代で評価されるものもあれば、後々評価されるものもあると思うんですけど、僕らはあの頃はEPICという中でこれからいろいろ何が起こるんだろうと、すごく楽しい気持ちもあるんだけど岡村くんの成長に僕らがどうやってついていくというか、そういう部分も非常にあったし。みなさんにその場で伝わったかどうかは僕らも分からないんですけど、今こういう形でまた岡村くんがちゃんと評価されている。やはり地道なものがこういう形で愛されていくという意味で言えば、すごくいいことを僕らも協力できたなと感じがしますね。彼自身の音楽にそれだけの力があるのは当たり前の話なんですけどね。

福田:正直言うと、僕の口からはきっとちゃんと伝えられていないというか。僕の時代はおそらくEPICからはきちんと伝えられるべきことが伝えられていない、広げられるところが広げられてないふうに反省しています。それを補って余りあるぐらい田家さんみたいな方とか、岡村くんをリスペクトするミュージシャンの方とか、クリエイターの方とかが遥かに的確な言葉で彼の音楽を今までずっと伝えてくれているんですよ。こういうアーティストって実はいそうなんだけど、本当に少なくて。どこかでその声が途切れたり、ちょっと曲がって伝わることがあるんですけど、彼の音楽の良さ、彼のアーティストの魅力がすごくいい言葉でずっと30年以上伝わっているのは彼の素晴らしさだと思いますね。

田家:来週は最終章になるのですが、福田さんは来週も登場いただきます。

福田:はい! お願いします。

田家:西岡さんありがとうございました。

西岡:ありがとうございました。

Rolling Stone Japan 編集部

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