田家:流れているのはこの番組の後テーマ、竹内まりやさんの「静かな伝説」です。
『靖幸』の最後に「バスケットボール」という曲が入っているのですが、〈僕はまるで 誰もいない教室の 机に書いてある 意味のない落書きさ〉って歌詞があったんですね。どこか痛々しいなという一行でありまして。先週は1988年の話をしましたが、1989年というのは日本の株価が史上最高を記録した年なんですね。つまり、経済的に言うとバブルの絶頂期が1989年でそこから後退期に入っていくわけです。1988年、1989年というのはバブルに向かっていく日本が1番浮かれていた時代で。青春というのも、その中に巻き込まれていったわけですね。世の中が変わっていく中で若者たちの在り方もそれにつられて、激変していった。
あらためて岡村さんの80年代後半はバブルに翻弄された多感な才能という1つの例かもしれないなと思ったんですね。とても感受性の強い、才能のある、表現力のある、そしていろいろなことを学びたいと思っている若者が目の前の激変する風景、出来事、生活模様にいろいろなことに考えて、それを作品にしていって根幹にあったのが青春だった。『靖幸』の後に90年に4枚目のアルバム『家庭教師』が出るんですね。あらためて思うのがこの型破りさ。類型とか、前例がない、いろいろな音楽が全部ここに集まっていて自分の音楽になっている。当時の岡村さんのインタビューの中に「ちゃんと分かってもらえるのは10年後、20年も後だと思う」という発言がありました。『靖幸』そして『家庭教師』から30年が経ったわけです。来週は最終週をお送りします。
左から田家秀樹、福田良昭、西岡明芳
<INFORMATION>田家秀樹1946年、千葉県船橋市生まれ。中央大法学部政治学科卒。1969年、タウン誌のはしりとなった「新宿プレイマップ」創刊編集者を皮切りに、「セイ!ヤング」などの放送作家、若者雑誌編集長を経て音楽評論家、ノンフィクション作家、放送作家、音楽番組パーソリナリテイとして活躍中。https://takehideki.jimdo.comhttps://takehideki.exblog.jp「J-POP LEGEND FORUM」月 21:00-22:00音楽評論家・田家秀樹が日本の音楽の礎となったアーティストに毎月1組ずつスポットを当て、本人や当時の関係者から深く掘り下げた話を引き出す1時間。https://cocolo.jp/service/homepage/index/1210OFFICIAL WEBSITE : https://cocolo.jp/OFFICIAL Twitter :@fmcocolo765OFFICIAL Facebook : @FMCOCOLOradikoなら、パソコン・スマートフォンでFM COCOLOが無料でクリアに聴けます! →cocolo.jp/i/radiko