KIRINJIが体現するポップスと社会の繋がり「もっとライトな感覚で歌ってもいい」

「薄明」のささやかな希望

―アルバムタイトルの『crepuscular』は、シングル曲「薄明 feat. Maika Loubté」がモチーフになっているそうですね。まず、「薄明」というのはどこから出てきたんですか?

堀込:あの曲のサビに“雲の切れ間から降る光の帯を”という一節があるのですが、そういう状態をなんていうのかなと思って調べてみたんです。そしたら、「薄明光線」というのが出てきて。最初はこれにしようかなと思ったのですが、「誰か使ってるかな」と調べてみたら、この言葉を使ったアルバムや曲がちょこちょこ出てきて。(笑)。昔の曲だったら別にいいかなと思ったら、割とここ1、2年の曲ばかりだったんですよね。みんな、ちょっとした希望を求めているんだなって思いました。



―わかる気がします。

堀込:だから、狙いは悪くないんだろうけど「お前もか」って感じ(笑)。それで別の言葉を探そうとしたら、クレプスキュール(Les Disques Du Crépuscule)という昔のレーベルを思い出しまして。

―やはり、そうでしたか(笑)。

堀込:それで調べたら、英語では「crepuscular」と書くらしいと知って。光が降り注ぐという意味もあるしピッタリだなと。曲調も、狙ったつもりはなかったですが……。

―クレプスキュールも連想させるフレンチ・ポップス風ですよね。このサウンドはどこから持ち込まれたものなんですか?

堀込:この曲は、ヨーロッパっぽい感じのメロディーとかハーモニーが先に出来上がりました。あとはフレンチ・エレクトロのプレイリストをよく聴いていました。Paradisの「Toi Et Moi」という曲がすごく好きで。

―高樹さんが昨年作成したプレイリスト「killer tunes protect you」にも入ってましたね。

堀込:「ああいうのをやりたいな」って漠然と思っていました。そこからメロディーもヨーロッパっぽい雰囲気になったので、自分が歌うより他の人にお願いしたいなと考えたときに、Maikaさんをラジオで知って。フランス語が使えるというのもあってお願いしました。



―あとはアルバム全体の演奏面で、若く才能あふれるミュージシャンの貢献が目立ちます。

堀込:ベースの千ヶ崎(学)くん以外は初めての人ばっかりだったので。ドラムは今回3人も参加しているし(伊吹文裕、橋本現輝、石若駿)、角銅真実さんにマリンバを叩いてもらったりして。いろんな人に関わってもらいながら作ることができました。

―角銅さんが参加したインスト曲「ブロッコロロマネスコ」は、続く「爆ぜる心臓」への流れも含めて絶妙でした。

堀込:あの曲が出来たとき、音色をどうしようか悩んだんです。幾何学的なメロディーを人懐っこい感じで聴かせたくて、そこで浮かんだのがマリンバでした。ステレオラブとかフランク・ザッパみたいな匂いも少しあるから、中音のパーカッションでリズミカルな感じにするのがよさそうだなと。それで角銅さんにお願いしました。


Photo by Kana Tarumi

―ソロ・プロジェクトになったことは、今回のアルバムにどんな影響を与えたと思いますか?

堀込:それぞれ得意な人にやってもらっているので、録音が早いんですよね。それもあって、曲調そのものは落ち着いたものが多いですが、割とフレッシュで骨太な仕上がりになったと思います。

あとは、KIRINJIという名前を掲げてやることの意味ですよね。いろんな人に関わってもらいながら作っていくのは、堀込高樹という個人より、KIRINJIというプロジェクトの方がやりやすいなって思いました。今回、(フィーチャリングは)MaikaさんとAwichだけでしたけど、今後は他の方にメインヴォーカルもお願いして、自分は曲だけ作るというやり方もいいのかなとか。いろんな展望も見えてきています。

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