KIRINJIが体現するポップスと社会の繋がり「もっとライトな感覚で歌ってもいい」

「もっと気軽に話せるといい」

―最後に聞かせてください。「first call」には“陰謀論”や“闇落ち”といった言葉が出てきますよね。「薄明」にも“スワイプ”や“セルフィ”と出てくるように、近年のKIRINJIは同時代的なワードチョイスも特徴的ですが、ここはみんな驚く部分だと思います。

堀込:陰謀論は……抗えないですもんね、ある意味ウイルスみたいなもので。YouTubeとかで「坂本竜馬に資金を提供したのは誰だ?」みたいなCMが出てくるじゃないですか。それで「なになに?」と気になってクリックすると、そういう本の紹介になったりして。「これは変だ」と早めに気づけばいいけど、うっかり興味本位で見ちゃったりすると、一気にそっち側のテリトリーへと引っ張られてしまうから恐ろしい。

―そういう言葉も用いつつ、“人は孤独な生き物 でも孤立してたらいけない”と歌っているところにグッときました。

堀込:結局、コミュニケーションが失われているから気づけないわけですしね。


Photo by Kana Tarumi

―今日の日本において、“陰謀論”みたいな言葉が歌詞に盛り込まれたり、こういう問題がポップミュージックで扱われたりする事例はほとんどないはずで。そこはバランスの取り方も難しそうですが、どんなことを意識しましたか?

堀込:深追いはしない、ということですね。例えば陰謀論に染まっている人を歌ったりするのは、さすがに追い込みすぎな気がして。「陰謀論って怖いよね」ぐらいに留めておくと、それによって喚起ができるし、もしそういうことに傾いてしまった人がいたら「あ、俺そうかな?」ってなるかもしれない。ポリティカルなことや倫理的なことに関しては、「だからダメなんだ」「これが最高なんだ」と押しつけるのではなく、断罪しない、白黒つけようとしないのが大事かなと。

世の中には絶対、いろんなトピックが溢れてるわけだから、そこへ触れずに恋愛の歌とか、自分の悩みとかばかり歌って済ませるというのも面白くない気がして。自分自身とそういう社会的な問題は常に繋がってるわけだから。割とライトな感覚でやってもいいんじゃないかなって思います。

―今の話で思い出しましたが、10月の衆議院選挙の前日に「明日は選挙、投票行きましょう」とツイートしてましたよね。「ミュージシャンは政治を語るな」という声もありますが、僕はすごく嬉しかったです。ミュージシャンというより個人としての発信だったとは思うんですけど。

堀込:あれは個人的なものですね。実際、僕は50代なので、人口のボリュームゾーンなんですよ。その世代の人たちが「世の中をこうしたい」と思って行動に出れば、結構そっちに傾くと思うんですよ。今回の投票率は約55%らしいから、国民のほぼ半分が行ってないわけですよね。そこで「行きましょう」と呼びかけるのは、世の中を自分が考えるいい方向に進めるために、微力ではあるけど有効なのかなと思ってツイートしました。

さっきも言ったように、こういうことが気軽に話せるようになるといいなって思います。「自分はこう考えてるよ」っていうのを、もっと軽い気持ちで言えるようになるといいですよね。

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KIRINJI
『crepuscular』
2021年12月3日先行配信
2021年12月8日CD発売
リリース詳細:https://kirinji-official.com/contents/463547


初回限定盤(SHM-CD+DVD):¥4,070(tax in)


通常盤(SHM-CD):¥3,300(tax in)


「KIRINJI TOUR 2021」
【大阪公演】
12月7日(火)なんばHatch
OPEN 18:00 / START 19:00

【東京公演】
12月15日(水)Zepp DiverCity(TOKYO)
12月16日(木)Zepp DiverCity(TOKYO)
OPEN 18:00 / START 19:00 (両日とも)

■Member
堀込高樹(Vo/Gt/Key)
千ヶ崎学(Ba)
シンリズム(Gt)
橋本現輝(Dr)
岸田勇気(Key)
矢野博康(Perc/Manip)
MELRAW(Sax)

■チケット料金(全席指定席・税込・ドリンク代別)
・S席(前方席):9,900円
・A席(一般席):8,800円

ツアー詳細:https://www.kirinji-official.com/contents/463225

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