DEAN FUJIOKAが語る、コロナ禍以降の“突然変異”

―自身最大の規模となる18都市20公演での全国ツアー「DEAN FUJIOKA "Musical Transmute" Tour 2021」の20公演中13公演を終えて終盤に入っています。久しぶりの有観客でのライブを重ねてきて、今どんな想いを持っていますか。

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まだソーシャル・ディスタンスを取る必要があったり、一緒に歌ったり踊ったりしたりできないこともあって、どうやったら会場に来ること、その空間にいることを選んだ意味を感じてもらえるか、魂が共鳴するような体験を味わってもらえるかを考えました。今は、1時間半~2時間の演目を見るときにお客さんは座っていて拍手ぐらいしか物理的な行動ができない。そこで今回、初めてライブのために脚本を書いて演出を作ったんです。

―ご時世柄、そうなってしまいますね。

そうなったときに、物語の中に引き込むことでしか、以前の「みんなで騒ごう!」というアプローチ以外でお客さんを惹きつけ続けるのは無理だと思ったんです。それでプロットを作り始めて、それをもとに演出、曲のアレンジ、照明、小道具などを作っていきました。やっと有観客でできるようになって、でも以前とは全く違うルールのゲームの中でやっているわけで、そういう意味ではピンチでしたけど、苦肉の策でやってみたものがチャンスに変わって、新しい発見がありました。アルバムタイトルに「Transmute」、“突然変異”とつけたように、 どうやったら1つ1つの会場をTransmuteさせられるかというコンセプトでやってきて、既にもっと大きな物語を作れる可能性を感じましたし、もっとやりたいって思いました。今まではどこかサイズが上がっていくことに対して演目として見せるクオリティが反比例するようなトレードオフな関係だなと思っていて。

―会場規模が大きくなるにつれて、感じてきたということですか。

例えば、3万、4万規模になったときにお客さんはどういう気分になるのかなと思っていて。どうしても自分のモチベーションがそこに向かわなかったんですよね。まあ、やってる方は気持ち良いだろうけど(笑)

―お客さんが置き去りになっちゃう可能性がある、と(笑)

観ている人はぶっちゃけどうなんだろうって。それは配信ライブをやったときにも思ったんですけど。曲が良い、パフォーマンスが良いとしても、観ているのは15分が限界で、なかなか好きだけで引き付けられないんですよね。それをどうやったら引き付けられるか、お客さん1人1人の生理現象を理解してそこから逆算して演目を作らなきゃいけないことを考えました。それは大きなハコでやるのも同じかなって。大事なことは、ステージから一番遠いところにいる人でさえも、今日この瞬間ここにいることを選んでよかったと思えるような演目作りをしないといけない。その為にどういうことをやったら良いのか、というのは、すごく考えさせられましたね。

―こうしてツアーが進んでいると、既に完成されている今回のアルバムに対するDEANさんのモードも違っているのでしょうか? そこも“変異”しているのかなと思うのですがいかがですか。

そうですね。音源を超えなければダメだなというのは使命として今思います。音源って、どうしてもまとまっちゃうじゃないですか? それに、曲によっては3年ぐらい前のものもあるし。この2~3年は世の中の変化も大きかったですけど、自分の変化も大きかったので。常にアップデートしないといけない立場でもあると思いますし、そういう意味では完全に過去ですね。

Rolling Stone Japan 編集部

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