AKIRA with THE ROCKSVILLEがロックンロールをアップデートする理由

―十分、期待に応える作品になっていると思いますよ。アーティストとしての成長という意味では、矢沢洋子さん、KEMEさんと結成した「EL COYOTE」(エル・コヨーテ)の影響も結構大きかったんじゃないでしょうか。

AKIRA:あれは大きかったです。年上のめちゃくちゃギターが上手い人とめちゃくちゃ歌が上手い人の真ん中でライブをやらせてもらって、ヘラヘラしているようで緊張で吐きそうになってたんですよ(笑)。今回収録している「It’s So Easy」(リンダ・ロンシュタットのカバー/オリジナルはバディ・ホリー)が、お2人と初めてやった曲なんです。お2人ともすごくゆるいんですけど、めちゃくちゃプロなんですよ。「こういう風に歌ってこんな声が出るんだ」とか、「こうやってギターでリズムを出してるんだな」とか、一緒にやらせてもらったことで、自分にとってすごく刺激になりました。アコギを弾きながら3ピースで歌った経験が今作に活かされていると思うし、音楽的にも音楽をやっている女性としての向き合い方としても、良い影響があったと思います。

―「Indian Summer」はエル・コヨーテでやりそうな曲ですよね。

AKIRA:エル・コヨーテっぽいですね。「女の子3人なんだけど、なんかシブいですよね」ってよく言われたので。この曲は、かわいらしく聴こえるけどシブい、“ゆるシブい”曲です(笑)。

―“ゆるシブい”って新しいですね(笑)。この曲はレゲエっぽいけど露骨にレゲエじゃないですよね。

KOZZY:僕が作ったときは露骨にレゲエだったんだけど、これも歌を録った後にやっぱりAKIRAが弾いた方がいいんじゃないかってカッティングのギターを差し替えたら、“ゆるシブ”になったんですよ(笑)

AKIRA::はははは(笑)。この曲は最初なかったんですけど、夏っぽいスカみたいな曲も入れたいよねっていう話をしていて。歌詞のファイルに「Indian Summer」っていうタイトルと韻を踏んだ言葉の羅列があって、それをもとに作りました。

―AKIRAさんは、今作を作ってみて10代で海外に行った自分を客観的に見れたところもありました?



AKIRA:それはありましたよ。「Remember Me to Myself」なんかは、無理をして大人になろうとしている自分のことを思い出して、今20代半ばになって「まあそんなに前のめりにいかなくていいと思うよ」って、ゆるい気持ちで見ているというか。「もっとそのままやればいいよ」っていう気持ちがあったから、“そのままでいい”っていう歌詞が書けたんだと思います。

KOZZY:AKIRAが海外に行ったことについて僕が良かったなと思っているのは、自分なりのバックボーンができたことが1つの魅力になっていることなんです。若い人がミュージシャンを目指そうと思っても、日本国内で過ごしていると画一化されてしまうというか、少数派のサブカルチャーを身に付けるしか自分のバックボーンにする方法がないと思うんですよ。特にAKIRAみたいな90年代生まれの世代っていうのは、景気が良くも悪くもない、世界的にもそんなに爆発的に何かが発明されたり何かがドカンと流行ったわけでもない、そんなさざ波の中で自分たちのカルチャー、バックボーンを作れって言われても……っていう子たちが多いんじゃないかなって思うんです。AKIRAにはそこを打破してほしいなっていう気持ちがあったから、海外に行きたいって言われたときも、「絶対行った方がいいよ!」って言って送り出したんです。それで結構長いこと海外に行っていたわけですけど、プロデューサーとして見たら、良い自分のバックボーンのフィーリングを掴んで帰ってきたなと思ってますし、そこが他の若いアーティストたちと違うのかなって思います。もちろん、同じような音楽を知っていて聴いている子もいるんですけど、その捉え方というのがまるで違っていて。日本で聴くSublimeと海外のビーチで聴くSublimeは全然違うんですよ。

Rolling Stone Japan 編集部

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