ハイエナカーが語る、「青い自分」に区切りをつけた1stアルバム

―“脳みそはなんと言ってる~”と歌う弾き語り的なミディアム曲「Mirror」がすごく好きなんですけど、これはどんなときにできた曲ですか。

じつは、この曲だけ唯一僕が書いた曲じゃないんです(笑)。

―えっ? そうなんですか?

そうなんですよ(笑)。でもすごく良い曲で。同い年でシンガー・ソングライターをやっている小池神一君が、最近、コロナ禍で音楽をあきらめて地元に帰っちゃったんです。もともと、この曲については僕がアレンジとかレコーディングを手伝っていて、リズム録りまで進めていて、僕がガイドボーカルもしていたので、歌わせてもらったんです。

―クレジットの資料がないのと、アルバムの中に馴染んでいるので違う人の作詞作曲とは気づきませんでした(笑)。

アレンジは僕がやっているのと、わりと歌のタイプが似ているということもあると思います。結果的にアルバムを出すまでに時間がかかったことで、この曲を入れることになったんですけど、高校生ぐらいの頃からバンドをやっていて、その頃には同世代の人との別れってそんなにないじゃないですか? ハイエナカーという新しい名前になって、初めてアルバムを出すという中で、こういう曲が入っているのってすごいことだなって思います。



―「ゼロ」は、“僕らゼロを繰り返して1になる夢を見ているのさ” “変わらないために変わっていくんだ” “変身ベルトもないままに僕だけのヒーローショーは続くんだ”といった内容が、今の村瀬さんのアーティストとしての心境が伺える気がします。

「ゼロ」は、コードとかアレンジとか、そういうところも含めて、何かに寄せずに自分がやりたいことを詰め合わせた感じがしています。それもあって、本当に自分が思っていることを歌詞にまとめています。だから自分ではすごく好きなんですけど、“硬派すぎるな”って。

―“硬派すぎる”とは?

バンドを始めたてだったら、こういう曲は作れないだろうなっていうのがあります。やっぱり、いろんなことを見たり経験したりしないと、書こうとか歌おうとか思わないテーマだと思うんです。自分がそう思っているだけかもしれないですけど。

―自分がこうありたい、こうなりたいという理想があって、それに対して歌っているのかなと思いました。

「今これをやっていることが何になるんだ、と思ったとしてもそれは無駄じゃない」みたいなことがあんまり好きじゃなくて。「無駄は無駄だろ」って(笑)。でも、無駄なことを繰り返して、意味のあることを探したいんですよね。そういうことを思って書きました。

―そこにも繋がってくるような気がしますが、「夏になる」には“頷けない毎日を鳴らして”という歌詞がありますよね。レーベル名も「unazukenai RECORDS」ですし、”うなづけない”というのは村瀬さんが歌う上でのテーマなんですか?

「unazukenai RECORDS」は、配信するときにレーベル名が必要だったので、自分が書いた曲の中からキャッチーな言葉をレーベル名にしたんです(笑)。ヘンリーヘンリーズを始めたときは、中学校からの友だちと学園祭に出るために練習していて、そのままライブハウスからお話が来てライブをやってっていう、言わば何も考えずにいたというか(笑)。この前、フィッシュマンズの映画(『映画:フィッシュマンズ』)を観たときに思ったんですけど、もともと才能はあるんでしょうけど、最初の頃はじつはやりたいことがそんなにハッキリしていないというか。やっていくうちに「自分たちはこういうものなんだ」みたいになっていくことがすごく印象に残ったんです。僕もそれに近いんですよね。活動を始めてから、いろいろやっていく中で、“自分みたいな人が自分を好きになってくれる”傾向があったので、そのときに初めて「歌詞って届いているんだな」って思ったんです(笑)。じゃあ、そういう人はどういう人かというと、ちょっとひねくれていて、別に否定したい何かがあるわけじゃないけど、いろんな人とのコミュニケーションの中で、「こうだよね!?」って言われたときに「いや、違う」みたいな人が多いんじゃないかと思うんですよ。

―ちょっと、ひねくれた人たちが。

そうですね、自分もそうですし。ただ、それを大々的に言うのも、そういうタイプの人は違うと思うんですけど。振り切らないグレーなところにいる、一番わかりずらい人種なんですよね。

―あんまり白黒つかない感じ?

ある意味、白黒つかないものをハッキリ言ってる曲なんですけど、それは許してくださいっていう(笑)。

Rolling Stone Japan 編集部

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