岡村靖幸、最新アルバム『操』までを当時のプロモーターとV4代表が語る

岡村靖幸





田家:2020年4月発売、8枚目のオリジナルアルバム『操』の1曲目「成功と挫折」。音の感じが違います。今月のテーマの1つ「再評価」という言葉は過去の作品について使っているわけではなく、今の存在を再評価するための入り口なんだということで、後半は2004年から岡村さんを手がけている近藤雅信さん。事務所とレーベルの社長さんです。近藤さんが選ばれたのはこの曲ですね。

近藤:個人的な趣味で選びました。ファンクでメタリックでうねうねする感じが大好きなんですよ。

田家:2004年当時、それまではユニバーサルのデグジャムレーベルのトップだった。2013年に独立して事務所とレーベルを立ち上げられて、2016年にアルバム『幸福』、2020年に『操』を出されて。EPIC時代の岡村さんについてあらためてどんなふうに思われますか。

近藤:EPICという会社はとても特殊なレコード会社だと思っていて。ロックレーベルなんですけど、実はロックはいろいろな要素があるわけで。所謂アンチ歌謡曲というスタンスも非常に表層的な部分であって、実は岡村くんのプロデューサーである小坂洋二さんも、もともと渡辺プロダクションで布施明さんのマネジメントをやられたり、大沢誉志幸さんとか松岡英明さんは渡辺プロ系のヒップランド、当時はノンストップだったのかな、そこにいたりもしましたし。渡辺出身のディレクターも何人かいましたよね。そういう歌謡曲のノウハウを知っていて、その上で俺たちはカウンターカルチャー的なもの、自分たちの試合をやるみたいなレーベルだった。そこが従来のレーベルとちょっと違っていたんですよね。それを後押し、システムを作ったのは丸山茂雄さんでしょうし、岡村靖幸というアーティストはそういった意味では作家から育てていって、ソロでアルバムを出していくという、渡辺プロ的なセンスを持っていた人たちが昔やっていたことをこっちのフィールドで展開していたというタイプなんですよ。岡村くんもそういう意味では松田聖子がとても好きだったり、デビューする時には詞は松本隆さんとかユーミンに書いてほしいと小坂さんに言ったそうで。小坂さんに「君は何を言っているんだ」と怒られたそうですけど(笑)。

田家:先週そういう話をしたんですよ。

近藤:小坂さんってとても本がお好きな方だと思うんですけど、「こんな本を読みなさい」、「あんな本を読みなさい」って話もする中で自分で歌詞を学んでいったというか。小坂さんという素晴らしい師匠を得て学んでいったのが作品の一連の流れだと思うんですよね。僕がやったというのはその延長線上ですね。EPIC時代の仕事は外で見ていたんで、彼のやりたいことを微調整して世の中にプレゼンテーションするみたいな仕事を僕はやっているという自覚ですけどね。

田家:ちょっと微調整をした。

近藤:微調整。それはコピーワークとか、ジャケットのプレゼンテーションとか、世の中への見せ方。違和感なのかな、よく分からないですけど、ちょっとそういうのを加えてみたという立ち位置なんですよね。

田家:作品そのものは岡村さんそのものがずっと流れていることは変わらないという。

近藤:一貫していると思います、彼は。楽器を触っていてもやることは全く変わらないという印象なんですよね。

田家:1つの作品を語る時にチャートはそんなに意味があるわけではないという考え方もあるでしょうし、それも1つの結果なんだという考え方もあるわけで。2016年に発売になった『幸福』がアルバムチャート4位。当時オリジナルでは最高位。『操』は2位でそれを超えて、岡村さんのキャリアの中で1番チャートの順位が上なわけですよね。そういう意味では過去を超えたことになりますよね。

近藤:福田さんとか僕とか西岡さんの世代はレコードビジネスはオリコンとかミュージックラボとか、ああいう音楽業界でチャートで入るのがとても大事なことで。昔とてもお世話になった筒美京平さんが言ったんですけど、『ザ・ベストテン』に何曲か入ってないと眠れないって言うんですよ。うわーっと思って、そんなふうに俺はなってないなと当時思って。その時のチャートがある以上は絶対に入れなくちゃいけないと僕は強く思いますね。

田家:それを果たしているということですよね。

近藤:ポピュラーミュジックは売れてなんぼだから、どうしてもいつも入れたいですね。

田家:福田さんは『操』をどんなふうにお感じになりました?

福田:あくまで印象ですけど、彼がクリエイティブなことをずっと積み重ねてきたそこの厚み。それが近藤さんと出会って、近藤さんの手法、マインドが注入されることで新しさは絶対に失わず、厚みみたいなものがどんどん積み重なっていく。僕にしてみると、偉そうな言い方をすれば理想的なアーティストになっているのかなという感じはします。

Rolling Stone Japan 編集部

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