アリシア・キーズ×ケラーニ対談 フェイクな世界でリアルを追求する二人の哲学

アリシア・キーズとケラーニ(Photo by Kanya Iwana for Rolling Stone)

最新アルバム『KEYS』を今月リリースしたアリシア・キーズと、3rdアルバム『Blue Water Road』の発表が待たれるケラーニ。2人の実力派R&Bシンガーによる夢の対談が、米ローリングストーン誌による「Musicians on Musician」特集で実現した。

ケラーニは、アリシア・キーズの曲を初めて耳にしたのが一体いつだったのか記憶にない。物心ついた時からアリシアはスターであり、既に伝説的な存在だった。だから彼女の頭の中には、アリシアのCDやミュージックビデオが焼き付いている。学校では女の子たちが、アリシアのヒット曲「If I Ain’t Got You」で歌の上手さを競い合っていた。リリースされた2003年当時、ケラーニは10歳にもなっていない。2021年8月、西ロサンゼルスにあるスタジオでインタビューに応じたアリシアは、ケラーニの曲を初めて聴いた時の印象を「少しシュール」と表現した。「確か彼女の1stアルバムだったはず」とアリシアが振り返ったのは、ケラーニが2017年にリリースしたアルバム『SweetSexySavage』だ。「デビュー作という以上に、何か感じるものがあった。彼女が持って生まれたエネルギーね」とアリシアは語った。

アリシアがメジャーでヒットした2001年は、ひとつの時代が終わろうとする時期であり、ケラーニの世代と比較されることも多い。90〜2000年代の純粋なR&Bファンは、教会で培われた訳でもないヴォーカルスタイルから恋愛に対する軽いノリの歌詞まで、ケラーニ世代の全てを否定する。ただし、このふたりの間には、お互いへのリスペクトが確実に存在する。クリエイティブ面で両者には、美的な破壊力と地味な説得力がある。たとえ自分たちにかけられた期待を裏切ることになっても、本音で生きようとする信念がある。アリシアもケラーニも今がひとつの最盛期にある事実が、新たにリリースされるそれぞれの作品に反映されている。2021年12月にリリースされたアリシアの8枚目のアルバム『KEYS』には、彼女が新たに開拓した明確なビジョンが見える。ケラーニのニューアルバム『Blue Water Road』は、自身曰く「これまで出してきた作品とは全く違う」という。だから世に出すことさえ恐ろしく感じている。一方でアリシアは、積み重ねてきたキャリアの中で、今が最も強い自信を抱いている時期だ。




アリシアとケラーニの会話は熱心な好奇心に満ちていて、音楽を超えた深い関係が見えてくる。世代は違っても、今年40歳を迎えたアリシアは、ケラーニにどこか親しみを感じている。「あなたは自分の信念だけを追い求めているようだわ」とアリシアは言う。「“アリシアのように歌う”(ケラーニによる2020年の楽曲「Can I」の歌詞)と曲にしたあなたに、私はずっと注目していた。でも初めて曲を聴いた時に感じたのは、あなたのエネルギーと個性だった」というのが、アリシアが受けたケラーニの第一印象だった。

Translated by Smokva Tokyo

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