性犯罪者の元恋人が公判中に「法廷画家」を逆スケッチ、当事者が語る

法廷で法廷画家ジェーン・ローゼンバーグ氏をスケッチし始めたギレーヌ・マックスウェル被告(Photo by Jane Rosenberg/REUTERS/Alamy)

未成年の少女らを性的虐待したとして起訴され、拘置所で死亡した米富豪のジェフリー・エプスタイン元被告。エプスタインの元恋人で性的虐待の容疑で起訴されているギレーヌ・マックスウェルの裁判が継続中だ。今回、その裁判をスケッチし続ける法廷画家、ジェーン・ローゼンバーグ氏に話を聞くことができた。

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ローゼンバーグ氏は話題の裁判で被告人を描き、人間の哀れな境遇を深く掘り下げることでキャリアを重ねてきた。ハーヴェイ・ワインスタイン裁判やエル・チャポ裁判、R・ケリーの公判にも彼女はいた。スティーヴ・バノン氏の罪状認否や、ウディ・アレンの保釈審理、ジョン・ゴティ裁判にもいた(公判中ゴティは二重あごを指さして、あごを小さく描くようローゼンバーグに指示した)。コスビー裁判やボストンマラソン爆弾テロ裁判も取材した(もっともこの裁判では傍聴席が満席だったため、ジョハル・ツァルナエル被告の姿がほとんど見えなかった、と本人は嘆いている)。

そして今、ローゼンバーグ氏が担当しているのがマックスウェル裁判だ。元恋人のジェフリー・エプスタインによる未成年者への性的人身売買を幇助した罪に問われている社交界の名士は、2019年に獄中死したエプスタインの性的願望をかなえるべく少女たちを寄り集めたとして訴えられている。ローゼンバーグ氏の仕事は可能な限り中立の立場を保ちながら、複数の媒体に代わって裁判を取材することだ。「毎回、自分なりの意見はあります。でも追い求めている瞬間を、見たままにとらえようとしています」と本人は言う。「(裁判に対する)私の意見は反映されていないと思います」

だがごく最近、ローゼンバーグ氏自身も話題の人となった。彼女が描いたスケッチのひとつ、マックスウェル被告が公判中にローゼンバーグ氏をスケッチしている様子を描いたものがTwitterで拡散されたのだ。インターネットでは大勢がこのスケッチを面白がり、マックスウェル被告による「力の逆転」だと解釈した。だがローゼンバーグ氏いわく、公判中に被告が彼女をスケッチするのはこれが初めてではない。キャリアの初期にはエディ・マーフィや(「彼はポストイットにスケッチしたものを私にくれました。頭を振って、私をからかっていました」)最近ではルディ・ジュリアーニ氏の元側近レヴ・パルナス氏も公判中に彼女をスケッチした(「あれはちょっと落ち着きませんでした」)。

だからマックスウェル被告が自分をスケッチしていることに気づいた時も「私にとってはネタのひとつで、全く困ることはありませんでした」とローゼンバーグ氏。「あら、彼女が私をスケッチしてるわ、私も容赦しないわよ、と思いました」。彼女は必ずしもマックスウェル被告による力の逆転だとは考えていないが――「彼女の胸の内はわかりません」――これまでスケッチしてきた被告人と比べると、マックスウェル被告は異常なほど弁護団に対して感情を示している、と指摘する。またマックスウェル被告は、判事の許可を得て公判中に兄弟たちと一瞬言葉を交わした。こんなことは今までほとんど見たことがない、とローゼンバーグ氏は言う。

「彼女は法廷で、弁護団としょっちゅうハグやキスをしています。めったにみない光景です……愛情に飢えているのでしょうね。ずっと独房に隔離されているからでしょうか」 。マックスウェル被告が「大半の被告と比べて、動きが多い」ことも付け加えた。「みな椅子にじっと座ってほとんど何もしないので、私には助かるんですけど」

Translated by Akiko Kato

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